平成20年2月16日(土), 「文学の触覚 」(東京都写真美術館)に行く。


あまり興味なさそうな夫を誘って行ったのだが(それでもつきあいはいい夫),

一番夫が楽しそうにしていたのが印象的であった。



とある展示物にて・・・。


白い台に向かってライトが上から照らされており,

言葉(穂村弘の和歌中の言葉)がランダムにヒラヒラと台に映るようになっている。

それはまるで言葉が舞い落ちるような錯覚を起こす。

そして例えば「炎」という単語を触ると,ボワっと燃え上がる。

どういう仕組みだか分からないけど,すごく不思議。


で,違う展示を見ていた私がふと夫の方を振り返ると,

ヒラヒラ落ちてくる言葉を,フンガフンガとつかんで,エイヤと台に投げつけていた。

なんか,すっげー楽しんでるみたいでよかったです。



こういう展示,平野啓一郎とか好きそうだよなあ。

『あなたの,いなかった,あなた』とかでもそういう開拓とかしてたしなあ。

と思っていたら,やっぱり作品を提供していた。

先週はトークショーもあったらしい。

その作品は,白い玉を振り回すと,スクリーンに平野啓一郎の小節の一部が映し出され,

その一小節一小節がいろんなスピードで,いろいろな方向に駆け抜ける,というもの。


私が個人的にスキだったのは,森野和馬の『谷崎リズム』。

谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』の文章を使用し,機械的な音楽に載せ,文字をカラフルな●で印をつけていく。

・・・って文字にしても説明できないのがもどかしい。

音楽もちゃんと考えられていて,小節ごとにプツっと音がとぎれているし,

谷崎の『陰翳礼賛』の文章って,確かに,話すような呼吸だった気がする。

遠い記憶を呼び起こしてみると。



森村泰昌の「なにものかへのレクイエム」がよかったなあ。

三島由紀夫に扮した森村泰昌と,そこに掲げられた森村の文章。

美しい字体だけじゃなく,流れる文章がすばらしかった。

「静聴せい!」

という言葉が心を打った。

三島由紀夫が演説した時,ものすごい野次で三島由紀夫の演説はほとんど聞こえなかった,という。

それを森村泰昌が三島になりかわって,静聴せい!と喝を入れているのだ。

その時野次ってた人たちに,だけじゃなく,

この作品を見ている人たち,そしてあらゆる日本の芸術家たちに。



蛇足だが,残念な展示が少々あったので,挙げておきたい。



川上弘美と児玉幸子のコラボレーション(磁性流体)は,もう少し工夫があってほしかったなあ,と。

声の大きさで形が変わる,というのが限界なのかもしれないけど,

単語や内容で形が変わってくれるとなお楽しかったなあ,と。

(これは科学的な限界なのかもしれません。)


そして,結構プライベートなことや,心の淵に触れるような質問もあったので,

個室空間にしたほうがいいような気がした。

一応,まっくらな布に覆われた部屋,にはなっていたが,そこには次から次へと誰でも入れ,

「個室空間」とまではいかなかった。


私なら,「ドラえもんのもしもボックス」みたいにして,いくつか並べておく。

あえて黒い空間にせず,透明にして,外からは見えるけど中からの声は聞こえない,という感じ。

うん。いい感じ。


ちなみに,その質問の内容は


「好きな人はいますか?」


とか。


三十路もはるかに超えたいい大人(オバサン)が,

何がたのしゅうて,好きな人が「いる」か「いない」か答えにゃならんのじゃ,と思ってたら,

隣の夫が


「はい!」


って元気よく答えてた。

公衆の面前で。

どんだけ妻が好きなんだ・・・。←当然「好きな人=妻」が前提。



というわけで,二人で1000円という格安な入場券にもかかわらず,

1万円分くらい楽しんで帰った。