還暦を迎えてからひと月が過ぎた•••
この子は60歳になりました
この写真からいまのぼくを
想像することはできないでしょう
肝心なことは忘れてしまうのに
どこを歩いてきたのかは覚えている
年輪を重ねることなんて
過ぎてしまえば瞬く間です
歩き続けたからといって
その先に美しい風景が広がるのか?
そのようなことさえ
考えたこともなかったかもしれない
でも今にして思う•••
歩き疲れて立ち止まった時に
誰かしら手をさしのべてくれていた
振り返るとそう思う
さしのべてくれた手を
ぼくはいつも振り払っていた
水鏡に映る列車を眺めて
過去を映し出してみてはそれを恥じる
どこまでも突き抜ける明るい空
それを映す海の青さに
歩き疲れたことも忘れて
駆け出すこともあったかもしれない
芒の中を伸びる線路
横切る小道の踏切を渡ったとき
少年のぼくが追い越していって
振り返って笑っていた
ここまで歩いてきた時間を
画用紙に描くとしたら
輝く紅葉のような
色をつけることができるだろうか?
ぼくが残した足跡は
雪に埋もれ
波に消されて
風となる
息子も孫も
それを辿ることはできないだろう
それが足跡•••
それでもわかっている
歩き続けていれば
美しい景色に出会えることを•••
ぼくの旅は
いったいどこまで続くのだろう•••?
答えが出ないのは
楽しみが続くことでもあるのだろう