しなの鉄道北しなの線古間駅で暫し撮影を楽しんだあとはまっすぐ帰るつもりでしたが、ふと思い立って

(あそこへ寄ってみようか•••)

と、国道18号線を北上し、古間駅の次の駅で長野県側最後の駅である黒姫駅への入口となる柏原交差点を過ぎて勾配を上がっていきました。

 向かった先は国道から逸れて黒姫〜妙高高原間にある杉ノ沢踏切です(信濃町六月という地区です。ここから黒姫山と妙高山の麓の長野•新潟県境を流れる関川を隔てた新潟県側に温泉やスキー場などがある杉野沢というところがありますが、この踏切からはけっこう離れているのになぜ「杉ノ沢踏切」というのか私には謎•••)。

 踏切にやってきた理由は、先ほど古間駅で撮影した115系晴星編成が妙高高原駅から折り返してくるのを撮ろうと思ったからです。

 もちろんこれだけ暗くなってしまうと濃い青色の車体の列車は黒く潰れてしまうことは百も承知。

 ここなら通過してゆく列車と線路沿いの田圃の水鏡を絡めて撮影できるかもしれないという期待からでした。

 道路沿いの側溝の蓋の上に立ち位置を決めて妙高高原駅からやってくる晴星編成の上り列車を横から動画で撮ってみました。


 この路線がまだ国鉄信越本線だった時代•••少年だった私は夏休みなどに親戚のところに遊びに来てはここまではるばる歩いて東京の上野駅から新潟県の直江津駅や石川県の金沢駅などへ向かう特急•急行列車の写真をよく撮りに来たものです。

 若くして亡くなった父方の祖父の形見の古いカメラを下げて来ていた思い出の場所です。


 古間駅での記事でも述べましたが、この日はまるで真夏のように晴天だというのに午後から妙高山や黒姫山などの北信五岳は低く垂れ込めた雲に覆われてしまって見えなくなってしまいましたが、条件が良ければ木立の向こうに鎮座する黒姫山が見えるのです。


 国鉄分割民営化によりJR東日本信越本線となってもしばらくは国鉄時代のまま上野駅からやってくる特急「あさま」「白山」は健在でしたし、ゴールデンウィークや夏休みなどには遠く関西の神戸駅始発で北陸の富山駅まで定期運転されている特急「スーパー雷鳥」のうち1往復が延長運転されて特急「スーパー雷鳥•信越」として直江津駅経由で長野駅までやってきたり、スキーシーズンには首都圏からの急行「シュプール信越」、姫路駅など関西地区から急行「シュプール妙高•志賀」などもやってきたり賑やかな時期もありました。当時は既に大人になっていましたが、まるで子供のようにそれらの写真を撮るのに夢中になっていたものです。

 それも北陸新幹線開業による並行在来線の第3セクター化などで姿を消してしまいローカル列車しか走らなくなって久しくなります。


 この場所は角度によって南西に飯縄(いいづな)山、西に黒姫山、北西に妙高山を背景に列車を絡めて撮影できましたが、上信越自動車道が建設されてからはこの道路の高架がかなり目障りな存在になってしまって訪れることも少なくなりました。


 五月に訪れた六月地区•••少年時代や幼かった息子を連れてこの付近を散歩したりしていた思い出に浸りながら見送った列車と黒姫駅ですれ違ってくる下り列車を待つことにしました。

 次回に続きます。