今年は我が国の鉄道が開業して150周年。

    10月14日は新橋~横濱(現代の横浜駅ではなく桜木町駅)間に我が国初の鉄道が開業した日として毎年「鉄道の日」に因んださまざまなイベントが行われています。今年は150周年という節目の年ということもあってNHKテレビなどは特集番組を放送していますね。


    以前にもアップしたことがある内容になるのですが、昨年の今日、10月12日の上野駅でのこと…。

    昨年は「鉄道の日」に関連して国鉄時代に特急列車の前面に掲げられていたイラストマークをラベルにプリントした「ワンカップ大関」JR東日本の主要駅のNEWDAYS限定販売されるという情報をネットで目にして普段は買わないカップ酒を買いに深夜勤務明けの帰宅途中に上野駅に立ち寄ってみたのでした。

    まずは中央改札口を入ってすぐの店舗を覗いてみましたが見つからず
(それならば…)
と、中央連絡通路の店舗に行ってみても見当たらなかった(いい日旅立ちビールは並んでいましたが…)ので商品整理をしていた女性店員の方に訊くと男性店員の方に問い合わせてくれました。
    すると、その男性店員は
「こちらにはまだ入荷していないのですが、他の店舗を調べてみます」
と、スマホ(業務用?)を取り出して調べてくれて駅構内の他の店舗に電話をして問い合わせてくれました。
「他のお店にはまだ残っているところもあるようなので一緒に行ってみましょう」

    さすがに勤務中の方にそこまで面倒をかけては申し訳ないので
「自分で探し回ってみますからいいですよ」
と言ったのですが、
「大丈夫です。ついてきてください」
と言って店から出ていったので申し訳ないと思いながらもついていきました。

    いくつかの店舗に連れていってくれたのですが、やはり売り切れていたり未入荷だったりしてなかなか見つからず、
「ありがとうございます。お忙しいのにありがとうございました。日を改めて来てみますからもういいですよ」
とお礼を言って諦めて帰ろうとしたら
「5・6番線ホームの店舗に在庫が少し残っているというので行ってみましょう」
と、私を連れていってくれました。
    そのホームの店舗まで来るとお店は閉まっていましたが、彼はお店の業務用出入口から入っていって数本のワンカップを持ってきてくれて
「これだけ残っていました。少ないけれどこれで大丈夫ですか?」
    もちろん私は
「ありがとうございます。十分です」
「ここは今日はもうお店を閉めてしまったのでお会計は私の方のお店に戻ってきていただいていいですか?」
ということなので、再び彼が勤務する中央連絡通路の店舗に戻り、お礼に「いい日旅立ち」ビールなどを購入して丁重にお礼を重ねて帰宅の途についたのです。

    今は新幹線の列車名となっている上野駅在来線特急列車黄金時代のイラストマークや文字マーク。
「まるで子供だね」
と笑われそうですが、私が中学三年生の時に行われたダイヤ改正と「いい日旅立ち」キャンペーン当時を懐かしく思い出しつつラベルを眺めながら普段は飲まないカップ酒を舐めたのでした。
    店員さんにすれば小さな親切だったかもしれません…しかし、こんな些細なことでも私にとってきっと忘れることのない余韻を残す出来事でした。


    もうひとつ…。
    これは数年前にふらっとわたらせ渓谷鐵道を訪れたときのことです。
    平日のわりには結構な乗車率で、多くの座席が埋まっていましたが、私が座っていたボックスシートには私ひとりだけでした。
    途中の大間々駅だったか、乗車してきた旅行中とと思われる初老のご夫婦が
「ここ空いてますか?」
「どうぞ、空いてますよ」
    しばらくはご夫婦で車窓を眺めながら会話されていたお二人でしたが、ご主人の方が私に
「よく乗られるんですか?」
と、尋ねてきました。
「いえ、私は東京から来たんですよ」
「そうですか。車窓で見所とかご存知ですか?」
    ちょうど列車が神戸(ごうど)駅を発車して草木トンネルに入ったところ…。
    抜けるのに5分ほどかかるこのトンネルを出ると渡良瀬川を渡る鉄橋があり、その光景はオススメでしたので教えてさしあげるとお二人は席を立って前面右側に立って「かぶりつき」に…。
    左側では新任運転士のテストか添乗監査?管理職らしき二人の職員がチェックしています。右側に少し見える青いシャツの方がご夫婦のご主人の方…。
    わたらせ渓谷鐵道は渡良瀬川の上流部に沿って走る列車の車窓が美しい路線です。
    列車が次の沢入(そうり)駅に着いた頃、お二人が戻ってきて口々に
「いいシーンを楽しめました。教えていただいてありがとうございました」
    そして奥様がバッグから何やらお菓子を出して「ささやかですけどどうぞ」
と私に手渡して下さいました。

    そのお菓子…その時はお礼を述べて自分のバッグにしまったのですが、それ以来お菓子のことは忘れていました。
    そのお菓子のことは忘れたままバッグに入れっぱなしになっていたのですが…。
    思わぬところでこのお菓子が役立ってくれたのです。
    それは少し経ってからJR東日本上越線土樽駅を訪れたときのこと…。
    首都圏と東北地方の日本海側や北陸地方を直結する主要幹線の上越線ですが、貨物輸送では依然日本海側への大動脈であるものの旅客輸送では上越国境を越える需要は少なく、その役割は上越新幹線が担っています。したがって主要幹線でありながら群馬県の水上駅と新潟県の越後中里駅の間を走る定期旅客列車は1日わずか5往復。
    上越線の下り列車に乗って「国境の長いトンネルを抜けると…」の場所とされている新潟県に入って最初の駅である土樽駅で下車して隣の越後中里駅まで約1時間のウォーキングです。


    越後中里駅までやって来ましたが、お店らしきものは全然無くて、立ち並ぶ旅館も営業してるんだかしていないんだか…。
    お腹な空いてしまったのですがお店が全然営業しておらず
(むむぅ…どうしたものか)

    辛うじて駅前の酒屋さんなのか雑貨屋さんなのか判別に困るお店が開いていたので入ってみると、空腹を紛らわせてくれそうなものは菓子パンくらいしかありませんでした。
    とりあえず菓子パンをひとつだけ購入して駅の待合室に戻りました。
    その時にバッグにしまったままになっていた前述のお菓子のことを思い出したのです。
    お菓子はビスコでした。
(ビスコなんて何十年ぶりだろう)

    多分…幼少の頃に食べたことがあるくらいでしょう。
    しかし、空腹だったものですからビスコがうまかったこと…。
(うまい❗ビスコがこんなにうまいものだったとはな…子供の食べるものとばかり思っていたが…)

    あのときのご夫婦…特に奥様の方はトンネルを抜けて渡良瀬川の鉄橋を渡るときの前面展望がとても満足だったようで少し興奮気味でした。
    私は終点の間藤駅まで乗車したのですが、お二人は足尾銅山観光のために通洞駅で下車されました。
    下車するときに優しい笑顔で何度も何度も私に会釈していかれた姿が今でも脳裏に浮かんできます。

    些細な出来事かもしれませんが、まさに一期一会という言葉が似合う思い出です。