幸と不幸と現実と 54 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1996年から1997年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします



あもんは福江島の小さな山である鬼岳にやってきた
鬼岳は標高315mの小さな山ではあるが市内や海が一望できる
何やら珍しい形の火山として学術的にも貴重ならしいが
山というより丘のような形をしている庶民的な高台である











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そこに大の字で寝そべっている人がいたので近づいてみた
『やっぱ、ミクねぇじゃ。いつからここで寝てる?』
『あっ、やっと来た!昨日飲みすぎて、寝付けが悪かったから、朝早くから来て寝ちゃってた』
『ははは、確かに気持ちいいな』

あもんもミクねぇの横に大の字で寝てみた
空が広く広がり弱い海風が心地よく全身を湿らせる

『大の字って、凄いよね』
『全てを受け入れます!って感じ。大事な鍵だって捨てられる気がする』
『大事な鍵を捨てるのは何か大事なモノを見つけるために捨てるの』
『大事にするモノって見つけたら離したくないじゃない』
『そのために必死に頑張って、しがみついて、、、』
『悔しくて、悲しいけど、それでもギュッと握って』
『だけど、本当に大事なモノってそれじゃないと気づいたとき』
『なかなか鍵は捨てられないよね。今までを否定してるみたいでさ』
『ミクねぇ、どうした?寝ぼけてるのか?まだ酒が残ってんのか?』
『うふふふ、ちゃうって!』


『あもん君、マイウェイって曲知ってる?』
『ああ、知ってる。日本人もカバーしてるよね』
『彼とウチはジプシーキングスのが好きやった』
『だから、ウチらはマイウェイを選んだんやね 』
『えっ、どんなマイウェイだ?』
『ウチな、勘違いしてたみたいや 』
『色々あったから、不幸なのがマイウェイやと思ってた 』
『やけど、あもん君が『違う』って言ってくれた』
『何も分かってへんのに違うって言い切ったんや』
『どこにそんな自信があるの?って不思議やったわ』
『あはは!自信なんかなかったわ。ミクねぇが何言ってるか分からんかったし』
『じゃけど、自分のことを不幸だって決めつけているのが嫌だったんじゃ』
『不幸とか幸せとかが何かも分からんかったけん、不幸って言い切っていたのが悔しかったからかもしれん』
『いや、そんなに難しく考えんと、もっと単純に考えればええじゃん!って思った』
『なんていうか、、、昔話はもうええじゃん!今、楽しいってことに素直に笑って、明日ももっと楽しいだろうな~って思えばええじゃん!って感じかな』
『うん、あもん君の言っていること正しいと思うで。せやけど、単純って一番難しいねん』
『そうかな。俺って馬鹿じゃけん、難しいとか考えたことないけど』
『ミクねぇが頭良すぎるんじゃろ!いろいろ考えすぎというか』
『うふふ、頭良すぎるとか、普通言わんよ。褒め言葉になってへんし』









『あもん君、あんな。。。。 』
『ん?』


『ウチ、あもん君のこと、好きやで』
『せやけど、あもん君のマイウェイにはウチは必要ないねん 』
『ウチのマイウェイには必要やったけどな』
『あもん君、君はもっと応援してやって』
『ウチだけじゃなく、もっと多くの人を応援してやって』
『あもん君のマイウェイはそれ』
『なんだよ~勝手に決めんなよ~じゃけど、それは俺も思ってた』
『うふふ、せやろ、、』
『ミクねぇ、幸せって一体、何なんだ?』
『う~ん、そうだな、、、幸せって何だ?って思わないことやろうか』
『えっ、どういうこと?考えるだけ無駄ってこと?本当の幸せってないってこと?なんだ?』
『あもん君、それはちゃうよ』


『幸せは必ずあるねん』
『不幸っていうのは“これまで”で、幸せっていうのは“これから”ってことや』
『えっつ、どういうこと?』
『あはははーなに言うてん?あもん君が教えてくれたことやん』
『えっ?それが理解できてへんのに、人に教えれんやんか』
『俺、そんなこといつ言った?』
『あもん君の口からははっきりとは言ってないけどな』
『だって、あもん君、表現するの下手くそやから』
『でも、あもん君の伝えたいことはウチには伝わったわ!ありがとう』
『ミクねぇ、言ってること全然わからんわ!』
『あもん君、ウチが言っているのは幸せがある場所ってこと、、分かるかな?』
『えええーますます分からんようになった』
『あはははは!やっぱ、あもん君は可愛いわ!』
『うん、そうね、あもん君にはまだちょっと早かったかもしれん』
『あもん君、ウチ、行ってくるわ!』
『どこに?』


『ネパール』
『もちろん、これから幸せになるためやで!』
『あもん君に最後にひとつだけヒントを言います』
『はい』


あもんはなんだか、小学校の先生に教えられている気分になった

『はい。いい子ね。それではよく聞いてくださいね』
『まずは、現実が何かを考えなさい!』
『えーーーヒントになってないじゃん!』


ミクねぇは今日の夕方の便で旅立つと言っていた
あもんも同じ便で帰ることになっていたので一緒にフェリーに乗ることにした
フェリー乗り場ではサカナ組と酒宴組が見送りに来てくれた
あもんは大将にお礼を言っていた

『おお、お前ら、仲いいな、何かあったか』
『え?そんなこと、ないっすよ』
『ミクねぇな。。。いい子なんだけどな』
『運がねえんだわ。不幸ってやつ?』


うっすら気づいていたことだが、大将はミクねぇのことをよく知っていた

『そんなこと、ないっすよ』
『ミクねぇは不幸じゃないっすよ!今から幸せになるんじゃけん』
『えっつ?そうなの?』
『なんだよ、お前ら、仲がいいな~俺も加えろよ!』

あもんはここでの大将の嫉妬は意味がわからなかった


あもんはフェリーに乗り、デッキの上から見送ってくれている人を眺めていた
『うぉーい!あもん!』
とハカセがハイテンションで呼んでいる
あもんがハカセに気づくとハカセは港にある大きく丸いブイに乗った
堤防に付けてある緩衝ブイである
ハカセはそこで両手で手を振りあもん達を見送っていた
すると、そのブイは予想通りに回転し始めた
海に落ちると察したハカセはブイの上で走り始めた
走り出せばそれだけ早く回転するブイ
ハカセは必死にブイの上で走っている
ブイもハカセもどんどんスピードを増していく
そしてついに、ハカセは海に落ちた
『あはははは!』
ハカセは最高のお見送りをしてくれた





あもんは正直、ミクねぇの言っていることが分からなかった
あもんの何かの言葉か行動がミクねぇに何かを伝えたという
その伝わった“何か”がいくら考えても分からない
そもそも、幸せの存在や価値や理由が分かっていないのである
しかし、今ではあの時に分からなくて良かったのだと思う
あの時、未熟だったあもんが人生最大の壁である“幸せ”というものを理解するのは不可能だったからだ

人は人生を経験して理解をする
理解をして経験するのは理解をしたことにならず、路頭に迷うであろう
もしあの時、ミクねぇが答えを教えてくれていたら
あれかららのあもんは逃亡の人生だったであろう
幸と不幸と現実から逃げて逃げて、空っぽの人生を歩んでいたであろう


今、改めてミクねぇの言葉を解読してみたら
幸せは未来にあり不幸は過去にある
現実とは幸せと不幸を繋げているもので
幸せと不幸は現実によって繋がって成立する法則なのである
と思いもするが、ミクねぇの答えは未だに分からない
たまにミクねぇのことを思い出す
思い出すたびに幸と不幸と現実とを考えてしまう







そして今、ミクねぇが何処で何をしているか
あもんは知らない






あもん史~妄想編~
幸と不幸と現実と

終わり