幸と不幸と現実と 43 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1996年から1997年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします



北海道を共に旅したメローちゃんは疲れていた
メローちゃんとはTS125Rというバイクだ
125CCながら広島県から青森まで自走し
北海道では函館からニセコ、それから日高へ向かい帯広経由で弟子屈へと抜けた
そして、オホーツク海沿岸を走り稚内から利尻島へと渡った
再び稚内から富良野へ向かい小樽から舞鶴までフェリーに乗って福山まで帰ってきた
旅の走行距離数は5515kmで7月28日に出発し9月9日に帰宅している
メローちゃんの全走行距離数は17000kmとなっていた
ちなみに、もう1台のバイクXJR400は43000kmになろうとしいた





あもんの次なる目的地は長野県である
ここから長野県までバイクで走ると2日はかかるだろう
運良くまぐろ大将から車に同乗してもいいよとはがきが届いていた
日にちと時間が書かれてあったが、正確に来るとは限らなかった
だが、あもんはこのはがきを信じることとし
今回の旅はバイクを休ませてやろうと思った


まぐろ大将とはあもんが今年のGWに出会った旅人である
彼は数年前に北海道や沖縄を一人で旅をし、現在は福岡でサラリーマンをしている
その時に出会った仲間と年に数回C場で会うようにしている
こういう集まりは日本全国で開催されているようで
一人旅を始めた者同士が旅先で出会い
意気投合して、また何処かの旅先で出会うということは珍しくなかった
それは、今回のような集まりだけで言えることではない
旅をしていて偶然出会う時もあるから旅は面白い
現代とは違い、携帯電話をほとんど持っていない旅人ばかりだ
その偶然がまるで引力のように旅人を導いているみたいで不思議であった


あもんが大学3年生の時に青森ねぶたで出会ったのが
まぐろ大将のグループであるサカナ組だ
サカナ組は大将がリーダーであるかと思われがちだが、実はそうでなない
別に決まったルールなど全くなかったから、みんなそれほど意識はしていないみたいだし
基本的には一人旅が好きな旅人の集まりだ
みんなそれぞれで自由人となっており、別に集まりに参加することは義務ではない
ただ、面白いからこの様な集まりに参加しているだけであろう
『世界統一ライダー教会 安曇野説法会』
というのも当時世間を騒がせていたある宗教から面白がって命名しただけだと思う



あもんは久々に福山大学に行ってみた
そこには相変わらずの面々が通っており
さしあたってあまり変化はないように見えた
あもんは既に単位も取り、卒業研究もほとんど終わらせていたが
みんなは卒業研究に課題に取り組んでいるようであった
久々に見た大学の友達ともそれとなく接触し、話をしたが
どれも刺激をもらえるような話題では無かった
やはりあもんにとって、今回の北海道旅が刺激的すぎたのであろう
平凡なる大学生活が嫌になったわけではなかったが
あもんは大学に通うより、まだまだ旅がしたかった
旅をして、いろんなことを感じ、考えたかった


未知なる地で未知なる見解を広め、その先に見えるものは何だ?
見えたものが正しいかどうかは自分で判断してみればいい
そこで他人の意見に従ってはいけない
人からの意見で将来を決めることもしてはいけない
あもんは、いつの間にかそんな意志が沸いていた
その意志を全うするにはより多くの意見を聞くことが大事だ
あもんは学生と言う立場である
より多くの見解を聞き、自分にとっての“正しいこと”を見つけられるチャンスがある
それが平凡な大学生活より刺激的な旅先の方が多いのは確実だ
このチャンスを逃すとあもんは将来、損をしてしまうだろう
損をしない様に、これからあもんが成すべき志を見つけなければいけないのだ
あもんは、いつの間にかそんな意欲が沸いていた






ということを、今から学校を再び休む理由としよう

ということで、旅立つ準備が整った

運よく、ゼミの友達が就職活動の為に20日着で実家の大阪へ帰ると言う
あもんはそれに便乗し19日の夜、友達の車に乗って旅を始めた
朝9時前にあもんは泉大津港に下ろされて大将を待つことになった
大将は本当に来るのだろうか?



『マジで来た!あれは大将のハイエースだ!』
あもんはハイエースに向かって手を振った
窓から顔を出して、手を振り返したのは大将だった



『おおーあもん、生きてたか?』
『はい。お久しぶりです』
『北海道行ってたんだっけ?もう帰ってきたのか?』
『はい。この前、帰ってきました』
『お前もまだ、旅を続けているんだろ?』
『えっ、はい。。。』
『そうか、俺もだ』

と大将は言い、それ以上あもんに旅のことを聞いてこなかった


あもんと大将は今年のGWで数日間キャンプしただけの仲だ
しかし、その数日間の間に“外国人と日本人の人生の幸せについての違い”という
なかなかディープな話をみんなで語り合っていた
人生の幸せについてという大きな問題はそこでは解決しなかったが
それぞれが新たに人生について考えるきっかけにはなったと思う
あもんもあれから北海道旅をして、自分的には成長したつもりだ
あの時、大将たちが持っていた意見に対抗できる意見が出来るかもしれない
だが、旅を終えたあもんの新たな意見は大将には興味がなかったのだろう
加えて、あもん程度の旅話は参考にもならないのだろうか
あもんも人見知りをする性格で、基本的には無口だったので
自分から自分の旅話を始めることもなかった
それから長野県のキャンプ場まであもんと大将は話をすることが無かった


車は長野県安曇野市黒沢キャンプ場に着いた
着いた瞬間、大将はあもんに言った

『あははは!あもん、お前もそうとうの自由人だな!』
『まだ知り合って間もないのに、お前は車に乗ってから直ぐ寝やがった』
『俺の車でイビキかきながらそこまで寝てた奴ははじめてじゃ!あははは』


そう、あもんはハイエースの心地よさから、車に乗って直ぐ眠ってしまったのだ
大将が運転しながら、あもんに何を話しかけていたのかは知らない




続く