あもんのおつかれさまの国 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

22時30分
あもんは車のドアを開けた
『ふぅ~』
毎日繰り返すこのため息
あもんは缶コーヒーを開けエンジンを賭けた

『あもんさん! こんな遅い時間までご苦労様です』

カーナビのナビゲーター“日向えり”さんがあもんに話しかける
毎日この時間に同じ言葉で話しかけられる
『今日も最後の会話はえりさんか‥』
あもんは独り言を言いつつコーヒーをひとくち飲み
ふと今日のセリフを思い出した

『なんでそうなん!?ちゃんとやろうや~』



与えられた仕事の責任感が年々重く感じ
達成感までの時間が年々長くなっていく気がする
伝えたいことを伝えられないやりきれなさ
指示した以上のことを望んでしまう愚かさ
もどかしさと苛立ちがすぐ沸騰してしまう、弱い自分
ついついきつく当たってしまう卑怯者のあもん
口に出しことをすぐに否定する勇気がなかったので
重い雰囲気を創った自分はその場から逃げた
これじゃ~ダメだ
全くもってダメだ
苦労の先のあなたの笑顔はまだまだ想像もできやしない

『帰って‥早く寝よう‥』

帰るまでに眠ってしまってはいけないので
あもんはFMラジオからHDDプレーヤーに切り替えた
ディーゼルエンジン音に邪魔されながらこの曲が流れた










今宵は満月
今、この曲は日本中で流れていたみたいだ
何を言っても反論され『私が貝になりたいよ‥』とつぶやく政治家
会社の歯車になってしまったことに気づいて、NOと言っているサラリーマン
『派遣だからしょうがないよ』と言われ、わかっちゃいるけど納得がいかない派遣労働者
育てる使命と母性本能で愛を捧げたため、愛貯金が少なくなっている新生ママ
『ウザいと言われるために育てたんじゃねぇ』と布団の中でつぶやく親父
何のために今こうしているのかを探す暇がない受験生
自分遺産を貯める旅に出ている大卒OL

みんな、みんな疲れているんだよね
疲れているからこの言葉が必要なんだよね

だったらこう答えておくれ





ありがとう
大丈夫です
おつかれさまです






冷蔵庫にアリナミンは無いけれど
もう一度この曲を聴いてから眠りにつこう