さくらんぼとふたりんぼ 4~あもん史 妄想編~ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします





『ラッセラーラッセラー!!』
『ラッセラッセラッセラー!!』
『ラッセラーラッセラー!!』
『ラッセラッセラッセラー!!』

青森フェリーターミナルにテントを張って3晩目になった
あもんは今日も青森の夜で狂喜乱舞していた
今晩で夜のねぶたは最終日であった
明日が青森ねぶた祭りの最終日であるがねぶたの運行は昼に行われる
昨晩はねぶたが終わった後にみんなで飲んだ
そこでみんなにこの集団のことをいろいろ聞いた




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あもんが偶然にも出逢ったこの集団はサカナ組と言い
博多に住んでいる“マグロ大将”というキャンパーネームの大将がいる
残念ながら今年のねぶたには仕事があるため来られなかったらしい
そもそもサカナ組の結成は大将と砂糖さんが出逢ったことに始まった
当初は共にライダーであり、あるバイク雑誌のバイクミーティングで出逢ったのだ
何度かのミーティングで意気投合した二人は北海道ツーリングに行くことになる
そこで出逢ったのがシンさんや福さんであり
そして“青森ねぶた”の噂を聞いて北海道から南下したのだった
大将は青森ねぶたが終わると石垣島へ旅先を変え
北海道で出逢った仲間とともに石垣島の米原キャンプ場で旅をした


そしてシンさんや福さんは次の年も北海道を旅した
そこで出逢ったのがハカセやチェリーなどである
元々はソロであったライダーが多くの旅で意気投合し仲間となる
そんな出逢いの繰り返しでサカナ組は全国に多くの仲間がいるのである
それぞれは年中一緒というわけではない
この青森ねぶたや北海道や定期的に行われるキャンプなどを連絡しあい再会をしていた
又、その中では海外を旅している者もいれば働いている者もいる


彼らは“バイクを乗っている”というただ一つの共通点で結ばれているのだ
そしてそこには多くの思想や主張、生き方や楽しみ方があった
考えてみるとあもんもバイクを乗っていなかったらサカナ組には出逢っていない
多くの仲間の思想を聞くこともなく狭い世界で生きてくことになっていたであろう
あもんの基盤は間違いなく海田高校応援団であるが
今から成長する独自のこの思想はこのサカナ組の影響が大きいと言っても過言ではない
結果、バイクに乗り始めたということであもんの世界は広がったと考える



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夜のねぶた最終日はクライマックスを迎えていた
ハネトは悔いを残さないようにと一心不乱に跳ねていた
雨が時折降ったりしたが、ねぶたは中止などしない
必要に応じて透明のビニール袋をかぶせてねぶたは運行されていた
見るからに地元人と思われる女性が跳ねていた
色が透き通るように白く豊満な体つきをしている
そんな艶やかな女性が激しく跳ねていた
汗なのか雨のせいなのか分からないが濡れた髪を激しく揺らしていた
女性とは思えぬパワフル感があり、あもんが跳ねるのをやめて歩いていると
“まだまだよ”と言わんばかりにあもんの前で跳ね続けていた
そんな女性を目の前にあもんも負けじと跳ね続けた
誰かも分からない人と人がひとつの祭りでひとつとなる
一生もう出会えないとしても今ここでこの瞬間だけひとつになる
あもんはこの時初めて“一期一会”を体感したと思った




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夜のねぶた運行も遂に終わりあもん達はねぶたの後ろから去った
しかし興奮が冷めきらないのがハネトである
ねぶたがいなくなった後でもハネトは『ラッセラー』と跳ねていた
誰かが始めたことでもなく自然と生まれてきたこの掛け声に
ハネトライダーの多くは跳ね続けている
そこであもんはゲポゥさんを見つけた
ゲポゥさんもまだまだ跳ね足りないのか狂喜乱舞している
するとここでゲポゥさんの興奮はクライマックスを迎えた
そしてゲポゥさんは跳ねながら衣装を乱し始めた
それはまるで自らで衣装を脱いでいっているようだった
たすきを投げ着物をずらし帯に手を掛け遂には着物を投げ捨てた
そこに現れたのは純白のフンドシであった
純白のフンドシ一枚で跳ねるゲポゥさんは一躍みんなの注目を浴びた




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『あはははは!』
『でた!毎年恒例のゲポゥさんのフンドシハネト!!』

あもんの隣にいたハカセが笑いながら教えてくれた
『ゲポゥさんはこの瞬間のために毎年来てるんだ~去年も大ウケだったぜ』
『あまりにの迫力にマネする奴はいないと思うな~』

ゲポゥさんは今年も夜のねぶた運行のトリを務めたみたいであり
その後の人気によりやり遂げた感がゲポゥさんにはあった



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次の朝、みんなは珍しく早起きであった
今日はねぶた最終日であり運行は昼一に始まるからだ
あもんも完全にハネトライダーとなっていた
ここにテントを張って4日目となるが
北海道ツーリングを開始して3日でここ青森まで着いたため
初めのペースでツーリングをしているともう北海道を縦走しきっている計算となる
しかしあもんはまだ北海道に上陸できていない
いや、ねぶたが終わってないからまだ北海道に上陸できないというほうが本意になっていたのである



『今日はあもん君のバイクに乗せてもらおう~』
『ねぇ~あもん君、いいでしょ~』

ねぶたの支度をしていたあもんにチェリーが言ってきた
『えっ、いいけど…そういえばチェリーっていつも誰かの後ろに乗ってんな。なんで?』
『だって、運転しないですむから~』
『ああはは、そうじゃけど、チェリーって何のバイクに乗ってるの?』

よく考えたらあもんはチェリーのバイクに乗った姿は見たことがなかった
『ヤマハのビラーゴなんだ。しばらく乗ってないからエンジンかかるかな…』
ビラーゴとはアメリカンタイプのバイクでチェリーのビラーゴは250ccであった
ヤマハらしく誰でも乗りやすいバイクでありホンダのスティードと同じく人気のあるバイクであった
『ビラーゴって“じゃじゃ馬”っていう意味なんだ』
『チェリーは女っ気が無いのからチェリーにはピッタリのバイクだな~』

物知りであるハカセがチェリーをからかい始めた
チェリーは確かに一切化粧をしていなかった
背が高く色が黒いほうである
旅人であるため当たり前だが、スカート姿は見たことがない

いつもジャージ上下で袖と足元を捲りウロウロしている
しかしこのハカセの発言にチェリーも応戦をした
『え~~私は女だよ~出てるとこは柔らかいし、いらないモノは付いてないもん!』
『じゃじゃ馬じゃなくて“元気いっぱいの女”だもん!』
『ね~あもん君、私って女だよね~』
『あぁ~そうじゃね~』
あもんは困った時にふられたと思い適当に答えた
『もう!あもん君、行くよ!』
少しはぶてたチェリーはあもんの手を引っ張りあもんのバイク跨った
みんなの準備ができたのでいつものようにハネトライダーは走り始めた
チェリーはあもんの後ろで一人、キャッキャ言っていた
『ねぇねぇ~あもん君!このバイクなんて言うの?』
チェリーは走行中のあもんのヘルメットに近づきあもんに話しかけた

『え!何?』あもんは多くのバイク音でよく聞こえなかった

するとチェリーあもんに抱きつきさらに接近して言った
『このバイクの名前は~?』
『あぁ~ペケジェって言うんだ』あもんは大声で答えた
『ふ~ん、よく知らないけどかっこいいね~』
『お前それ、適当に言っているだろう!』
『うん!だって、バイクのことよく知らないもん!!』

チェリーはあまりバイクに興味が無かったみたいだ
しかしあもんはこの時の背中の感触により
チェリーは間違いなく女であると確信したのだった







昼のねぶた運行は夜とは少し雰囲気が違いあの激しさは緩和されていた
どこかゆったりとして昨晩の余韻を楽しむように跳ねていた
見物客も夜に比べたらまばらであり運行との境となっていたロープが無くなっていた
ハネトも昨晩とは少なくなっていたが少ないために団結力は固かった
ハネトの一人が見物客の手を引っ張りあもん達の輪の中に入れた
ただの見物客を囲ってあもん達は跳ね続けた
するとあもん達に感化されたのか見物客も跳ね始めた
ハネトでない見物客もハネトにしてしまう団結力がそこにはあった
その団結力が分かったあもんとハカセは見物客にターゲットを定めた


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ターゲットはもちろん若い女性である
あもんとハカセは確かめることなくとも同じ意志を持っていた
二人は次々と若い女性を輪の中に誘い込んだ
初めは足を止める若い女性もあもん達の熱気に負け、いつしか一緒に跳ねるようになった
あるハネトは何を思ったか警備をしていた警察官を引っ張ってきた
警察官はかたくなに拒んでいたが納まりがつかないと判断したのだろう、少しだけ一緒に跳ねてくれた
『おい!あもん!“ミスねぶた”を見つけたぜ~!』
この時、ハカセの鋭い観察力は立派な成果を遂げた
『おぉぉおお~行こうぜ~』
と言ったのはあもんだけでは無かった
近くにいた男ハネトが一斉にミスねぶたを追いかけた
残念にもミスねぶたは車に乗ってパレード中であったのでハネト参加はさせてもらえなかった
しかしあもん達は『写真!写真!』と大騒ぎであった
男はどこに行っても男である





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青森ねぶた運行はこうした和やかな雰囲気の中、終わった

夜になると青森港で花火大会が開催された
青森ねぶたには各賞を与えられる事となっており
年間を通してねぶたを造るねぶた師が緊張をする時でもあった
あもんにとっては初めてであったためどのねぶたも凄いと思ったが
ねぶた師の中でも男の戦いは毎年繰り広げられているのであろう
賞を取ったねぶたは船に積まれ花火の前で海中運行される
それを最後に青森ねぶた祭りは終了するのである
青森の熱い夏が終わった

















『ねぇねぇ、あもん君っていつ北海道に上るの?』
その後の飲みでチェリーは聞いてきた
『うん、明日出発しようと思うとる』
『え!あした!早いね~』
『うん、いろいろありがとな』

あもんは北海道を夢見てここまで来たのである
青森ねぶたが終わった後は一刻も早く北海道に上陸がしたかった
『私はもうちょっとここにいる。でも私も北海道に上がるんだよ~』
『シンさんも福さんもハカセも森ケンもニョウイもね』
『私たち、富良野の中富良野森林公園C場に行くんだ~』
『あもん君もおいでよ~ねぇ!また遊ぼうよ~』

チェリーはみんなで仲良く遊びたいらしい
あもんは嬉しかった
ここで出逢えたみんなとまた飲んで語れることが
『分かった!じゃぁ~また会いましょ~』
とあもんはみんなに言った


次の日、あもんはひとり青森からフェリーに乗ることにした

続く