セブンの女 22 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします


事故をしたスミ子は運が良く命に別状は無かった
ただ打撲が多く検査の為に入院をしていた
あもんはスミ子の病室で椅子に座った
『あっくん、どうしたん?その顔?』
あもんの顔は腫れあがり別人のようになっていった
『コージと殴り合っての~やっぱりコージは強いわい』



『馬鹿じゃね~なんで男はいつもそんな、つまらんことするん!』
『痛かったじゃろ~コージは空手やっとったけんね』
『ああ~今でも痛いわ、でも痛くてええんじゃ』
『相手がコージだったけん、それでええんじゃ』

スミ子はあもんをじっと見つめた
『あっくん、それより…ウチ、話さんといけんね』
『ああ、今日はスミ子の話を聞きに来たんじゃ』



それからスミ子はあもんに全てを話した

スミ子に子供が授かったことを知ったコージは
全ての責任を取る為にまずは暴走族を解散させた
仲間や先輩からは当然のように反対されたがコージの決意は固かった
コージはスミ子を本気で愛し暮し始めようとした
そしてコージは生活の為に働くことに決めたのだ
やがてコージは営業マンとなり二人は同棲を始めた
スミ子はそれが幸せだと感じたがそれも束の間の感情であった


高校中退であるコージにとってサラリーマンの就職先というのは限られており
学歴社会である現代はコージにとても冷たかった
営業マンであるため理不尽なことにも頭を下げなくてはいけないコージは日に日にストレスが溜まってしまう
ストレスのはけ口を知らない若いコージはスミ子に愚痴をこぼすようになっていった
そんなコージをスミ子は魅力の無い男に見るようになっていった
スミ子が好きになったのは天辺を目指していた頃のコージである
それが暴走族の世界であっても天辺を追い求める姿に惚れていったのだ
追い求めることによって徐々にたくましくなっていくコージにスミ子は全てを捧げるようになった


スミ子にとって好きな人の成長を見るのは幸せであったのだ
しかし働き始めたコージにはあの目の輝きが無かった
学歴がないというハンディを背負いつつ
夢の無いサラリーマン姿が若いスミ子にはカッコ悪く見えたみたいだ
スミ子は子供を産んだらコージは更にダメ男になると考えるようになった
そして、そんな考えを持っている時に父親が他界をした
命の儚さを知ったスミ子は子供を産むことが怖くなった
そしてコージが背負っているモノを失くすためにコージと別れる決意もした


スミ子と別れたコージはサラリーマンを辞めAE86に乗り始めた
それからコージはグリーンライン制覇という新たな目標が生まれてきた
コージは徐々に昔のコージに戻りつつあった
しかしそんなコージを街で見かけたスミ子には何処かで振りきれていない影も感じたのだ
コージに対して恋愛感情はもう無い
だけど自分の為に落ちていったコージに対し罪を感じていたのだ
“昔のコージに戻って欲しい”スミ子はそう思った
そして、スミ子はグリーラインでコージを煽ることによって
あの頃のコージに戻れるんじゃないかと考え始めた
スミ子はシンジさんにお金を借りRX-7を買った
そのお金を返す為にシンジさんの母のスナック“セブン”で働き始めた
その後、スミ子はあもんと出逢った


“頼りなさそうな男”それがあもんの第一印象だったらしい
だが、いつしかあもんはバイクに乗り始め
徐々にあもんがたくましくなっているように見えた
だからスミ子はあもんに話しかけたのであった


あもんにとって“母”を感じさせたスミ子はやはり母であった
あもんの成長を促すための付き合いをスミ子は懇親的にこなしたのだ
しかしスミ子にとっての第一子はあもんではなかった
第一子はコージであったのだ
そう、スミ子にとってあもんは第二のコージだったのだ


あもんはにひとつ確信したことがあった
それは“スミ子とコージは今でも両想いである”ということだった
あもんは二人に出逢い、二人はあもんを好きになった
しかし好きになったのには潜在的な理由があったのだ
それは“お互いに遠くで繋がっていたい”という理由である
近くなくてもいい、いや、むしろ遠い方がいい
それがひとつの命を殺した二人の一生の償いと思ったのであろう




全てを聞いたあもんはスミ子に話し始めた

『ええな~スミ子、お前とコージはまだ両想いじゃん!』
『オレはスミ子に片想いだったとうことだけじゃの~』

『えっ、あっくん、何言うとるん?』



『まぁ、聞いていや』
あもんはスミ子が話す間もなく続けた
『お前ら二人なら一生つきあえると思うで』
『いや、一生つきあわんとイケんと思うとる!』




『スミ子とコージが間違えとることがひとつだけあるんじゃ』
『それはな、お前らが今の関係でおる言うことは…』
『二人の子供を2度殺すということじゃ』
『どういうこと?』

スミ子はあもんの言っている意味が分からなかったみたいだ


『ええか~人は二度死ぬと言われとるんじゃ』
『一度目は命が尽きた時、二度目は生きていたことを忘れらた時じゃ』
『スミ子とコージの子はお腹の中で生きとったけんの~』
『お前らは自分の子供を二度も死なせたらいけんのんじゃ!』


『このままでいけばワシはスミ子と結婚するかもしれん』
『じゃけどそれじゃあの子が二度死んでしまうことになる』
『それだけは絶対にしちゃぁイケん!』
『そして、あの子が永遠に生きられる方法がひとつだけある!』
『それは、スミ子とコージが弟か妹を作ることじゃ』
『そうすることによってあの子は兄ちゃんになれるけんの』


『うん、それがええ、スミ子そうしよう!』
『スミ子、ワシと別れよう!』


『あっくんはそれでいいの?』
『あっくんはそれで辛くないの?』


『おう!大丈夫じゃけん!!』
『それにワシ、そろそろ旅立つんじゃ』


『えっ、どこに行くん?』

『もうすぐ夏休みじゃろ~その一カ月半使うて北海道へ一人旅するんじゃ』

『いつから行くん?』


『明後日にするわ!明日、コージに同じ話して行くわ!!』
『後はお前ら二人で色々決めればいいけんの~』
『何かとワシがおらん方が事が進みやすいじゃろ』

『なぁ、スミ子、そうしようや!』
『なぁ、オレ達、それが丁度ええじゃろ!!』


しばらくしてスミ子は俯きながら言った
『うん…丁度ええね』



『あっくん、最後にひとつだけお願いがあるの!』
スミ子はあもんの目をマジに見つめて言った
『あっくん、絶対に事故だけはせんといてね!!』



『おう、それだけは絶対に守るけん!!』
あもんは微笑みながら答えた
『この約束は一生じゃけんね!』
スミ子は泣きながら言った
















あもんはその2日後
北海道に旅立った




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あもんはスミ子にした最後の約束を今でも守っている



あもん史~妄想編~セブンの女
終わり












次回作
あもん史~妄想編~さくらんぼとふたりんぼ
近日公開!!
憧れていた北海道の地で
あもんにどんな出逢いがあったのか!
それはまた今度、お話しましょう~
乞うご期待!!