この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1995年から1996年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします
『XJRをカスタムしたいんですけど』
大学3年生になったあもんは馴染みのバイク屋モトボックスで言った
『おお、いいじゃん!やっぱりオリジナルを作らなきゃね』
まだ若いモトボックスの店長が言った
店長は数年前に勤めていたバイク屋から姉妹店として出来たモトボックスを任されていた
自他認めるバイク馬鹿でオンロードからオフロードまでこよなく愛していた
ツーリングが大好きであり店主催のツーリングでも誰よりも早くかっ飛ばすタイプだ
『ツーリング行きましょ』とモトボックスに集まるバイク乗りに声をかける
この店でバイクを買っていない人まで誘ってしまう始末である
バイクを乗っているだけで仲間になれる
それはどのバイク乗りも実感できることである
老若男女が集まるモトボックスツーリングは時に50人を超える参加者となる
店長は変わり種のひとりで、いきなり『歴史を勉強しましょう!』と言いだした
それから毎週水曜日の20時から幕末が大好きな店長が講師となり勉強会が始まった
高校時代に『燃えよ剣』を熱読し『土方歳三』が大好きになったあもんはそれに食いついた
『やっぱ、組織を動かすのはNO.2ですよね~』
あもんもその勉強会で語った
この意見には一同が驚いていたが、あもんの信念に一同は頷き始めた
“幕末”は男なら誰もが一度は通る歴史である
男はこの歴史を勉強し情熱を教わるものである
『あもん君のXIRもそろそろ車検じゃけん、そのついでにイジろうか』
『はい!マフラー変えたいです!』
『いいね~やっぱりカスタムはマフラーからだよね~』
『で、車検の時に代車とかお願いできるのですか?』
『あっ、いいよ~今ちょうど、面白いバイクが余っているから』
と店長が指を差したバイクはヤマハDT200というオフロードバイクであった
『オフ車ですか!』
『そうそう、面白いよ~この近くにいい林道があるから行ってみたらいいよ』
『別にいくらコケてもいいからさ』
あもんは早速お勧めの林道へ行ってみた
オンとオフではバイクの乗り方は違う
オンではコーナーを曲がる時に身体を内輪に入れ重心をかける
オフではこれとは逆に身体を外輪に向けバイクを押すような形で重心をかける
またオンはコーナー前では前ブレーキを主とするが
オフでは後ろブレーキをロックさせタイヤを滑らせながらコーナーに円を描くのだ
初めての林道にあもんは戸惑いを見せるが徐々にコーナーをクリアしていった
XJRに比べ圧倒的に軽いDT200には瞬発力を凄く感じた
自分が操っているという感触が実感でき楽しさは倍増した
林道を行くとひとつの大きな坂があった
もちろん未舗装の坂である
ここでは一気にスロットルを開け坂を上る
ここでビビってアクセルダウンをするとバイクは坂を転がってしまう
あもんは根性を入れて坂を一気に駆け上がった
坂の頂きに着いた瞬間、バイクは空を飛んだ
見渡せば辺りは森と山
『おもしれ~』
とあもんは山々に叫んでしまった
『やっぱ、バイクはオフですね~』
とあもんは店長に言った
『そうそう、セカンドバイクとしてオフを持っている人は多いよ』
『保険の安い125ccでも十分に面白いしね』
『欲しくなったらいいバイク用意するよ』と店長は言った
あもんはこの時から数カ月後セカンドバイクとして125ccのオフ車を買うのだが
この時の店長によるオフロード代車作戦は見事な営業であると後から気がついた
『でも、やっぱり、バイク乗りは北海道を制覇しなきゃね』
と店長はいきなり話題を変えてきた
北海道ツーリングの話を以前からちょくちょく聞いていたあもんは食いついた
『やっぱそうですか!行った人はみんなそう言いますよね~』
『そうそう、大自然の中に伸びる一直線の道路をかっ飛ぶのは気持ちいいよ~』
『温泉も宝庫だし、混浴も多いよ♪』
『食べモノも安くてうまい!』
『北海道はある意味、夏のライダーによる収入を観光資源としているから、受け入れ体制が整っているし』
『それに全国のライダーが集まるからね、仲間が全国に出来るよ』
『大学生は夏休みが長いからあもん君チャンスなんじゃない?』
北海道という地はライダーになったら誰もが一度は目指す地であり
北海道から帰って来たライダーは仲間に魅力を語った
そして北海道はライダーにとってあこがれの地となっていたのである
『よし!僕も北海道に行きますけん!』
とあもんは意気揚々に店長に宣言をした
『行き!行き!あもん君のカスタムXJRは目立つと思うよ~』
と店長は車検とカスタムが終わったXJRを押してきた
あもんの目の前にはドでかいマフラーを着けたあもんのXJRが登場をした
『スーパーコンバットと言ってね、ちょっと高いけどいい音出すんだ~』
『あと、ブレーキホースもさり気なくお洒落だし』
『消耗品のチェーンも変えるならゴールドでしょ!』
あもんは変わり果てたXJRを見て店長に言った
『ありがとうございます!!』
店長は見事な営業マンであった
あもんは早速カスタムXJRをR2の仲間に見せた
そして『ツーリングに行こうぜ!』と仲間を誘った
『もっと遠くに遠くに行きましょ~~~』
あもんとR2メンバーは中国山地を縦貫し日本海を目指した
あもんはまだまだ走り足りなかった
まだまだこのXJRと走りたかった
あもんの北海道へのあこがれは増していった
そしてどうせ行くなら日本を縦走して行こうという欲まで出てきた
まだ見ぬ地にはどんな出逢いが待っているのだろう
あもんは北海道を夢見て少々興奮気味の日々を送っていた
続く