セブンの女 13 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1994年から1995年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします


スミ子と出逢って数カ月が経った
あもんはスミ子に夢中になっていた
そしてあもんは旅にも夢中になっていた
“一人旅”がいつも与えてくれるものとは“自分との対話”である
旅先の失敗により己の情けなさを見つけ
旅先の出逢いにより己の心情を察する
過去と未来の自分との対話により
“自分が一体どういう人間なのか?”が少しずつ分かってくるのだ
そんなあもんの意中を察して、あもんの一人旅にスミ子は快く承諾してくれた
『行って来んちゃい。でも、気をつけるんよ』そう言ってスミ子は見送ってくれた
西方面であるためあもんは一旦、実家にバイクを止めた
この時あもんが実家に帰って来たのは大学入学以来であった
久々の親子の対面に少し照れたがあもんは母にバイクと旅について多くを語った
どちらも初耳な母は聞きいって頷きあもんが何かを追いかけているなと感じたのだろう
『行って来んちゃい。でも、気をつけるんよ』あもん母もそう言って見送ってくれた
あもんはその時、気付いたのである
あもんはスミ子の中に“母”を見ていたのである
しかしあもんはなんだかムズ痒くなったのでそれ以上は考えることを止めた



九州へは広島市からフェリーが出ていた
夜8時に広島港から出港し午前6時に大分の別府に着く渡航である
旅でフェーリーが出発点というのはあもんは好きである
出航の瞬間は旅情を深く醸し出し出発地へと残る波に希望と不安が見えた
後にこの波は大海原へ消えていくのである
別府から湯布院方面へ向かい“やまなみハイウェイ”に辿り着いた
この名は熊本県道11号線の愛称であり日本有数のワイディングロードである
前半の森林浴を終えると九重連山が望むことができる
ここからは阿蘇外輪山を駆け下りていく
一本の道の両脇には緑のじゅうたんが敷き詰められツーリング心が躍り出す
徐々に阿蘇の雄大さが目の前に広がり人間のちっぽさを痛感する


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次いでミルクロードに進み大観峰へ
阿蘇五岳が横たわる姿は釈迦涅槃像と称されていた
こんな道は一心不乱に走るのが楽しい
何も考えずただバイクの鼓動を聞き左にカーブがあれば左に傾き
右の対向車線にライダーがいればピースサインを交わし
ただただ、大地を走るのだけで心地よい
ただただ、地球を走るだけで楽しいのだ



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ツーリングライダーにとって必需品と言われているモノがある
それは旅に意欲を与え旅を導くモノ“地図”である
ライダーの多くは昭文社発行のツーリングマップルという地図を片手に旅をしている
その九州編に記載されてある言葉にあもんは反応していた
“日本一の石段3333段”
当時のあもんは“日本一”という称号にやけに反応していた
日本一が日本一であることを確かめたい
何の日本一であるかはこだわりは無い
とにかく日本一である処に辿り着きたかったのだ
あもんは熊本県泉村釈迦院でバイクを止めた
若さのため勢いだけはあったのであもんは颯爽と日本一に挑み始める
そこで見たモノは挫折との戦いであった
永遠に終わらない石段に自分の意志を注入するが
疲労と不安が先立ち何度も何度も帰ろうとした
しかし日本一の先には何があるのかを知りたくてあもんは歯を食いしばった
そしてようやく辿り着いた日本一の先には何もなかった…





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熊本県を南下し鹿児島県を目指した
鹿児島県の目的地はライダーハウス“プラグポイント”
ライダーハウスとはその名の通りライダーの宿泊施設である
日本では主に北海道に点在しその宿泊料金の安さから貧乏旅人の憩いの場として成り立っている
本州でのライダーハウスは珍しく噂で聞いたことのあったプラグポイントにあもんは辿り着いた
バイク王国“プラグポイント”と呼ばれるこの宿はその名の通りライダーかチャリダーと徒歩ダーしか泊れない
始めての人は入国料金として300円を納めパスポートを貰える
そのパスポートを手にしていれば以後一泊100円で泊れる宿である
宿と言っても古い民家がそこにあるだけである
しかし台所や冷蔵庫、TVやこたつまで完備でありキャンプ続きの旅人にとっては楽園のようなものである
この古い民家には3間ありそこに多くのライダーが雑魚寝するのである
いつしかこのライダーハウスには入れ替わり立ち替わりで旅人が寝泊まりするようになっていった
受付とかは一切なくその民家の戸をあけるといつも先人がいる
その先人にこの王国のシステムを聞き取りあえず夜までくつろぐ
夜になると仕事帰りの国王が現れ入国審査後宿泊料を払う
国王に時間がある時は一緒に飲み旅談議に花を咲かすのである



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あもんはここで一人の旅人と出逢う
彼の名はジェーンと言った
ジェーンはあもんの一つ年下でYAMAHA FZR250を乗っていた
あもんとジェーンは直ぐに意気投合しこの宿を拠点にツーリングに出かけた

『鹿児島って天気予報で降灰確率ってあるんじゃな~!』
『桜島の灰で埋もれた鳥居って!ぶち、凄いじゃん!!』
『やっぱ、ここまで来たら本州最南端の佐多岬まで行かんとな~』
『えっ、ここから神風特攻隊が飛び立ったんか?』
『イッシーって!池田湖におる怪獣?ネッシーのパクリ?』

多くのカルチャーショックがあもんとジェーンを襲った
襲われたあもんは日本を“魅惑の島”と思うようになった
この狭い日本に多くの文化や風土があり多種多様な考えを持つ日本人がいる
あもんはこの時から日本をもっと知りたいという欲が生まれてきたのである



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プラグポイントには決まりが何個かあったが
その中のひとつに“出国時には記念撮影をすること”というものがあった
そこにはカメラがひとつ置いてあり
旅人は旅立つ前にプラグポイントの前で記念撮影をする
その写真は国王がアルバムに綴じ誰でも閲覧できようになっている
ここには多くの旅人が残してあった写真があった
又、何冊かのノートが机の上に置いてあり
北海道から沖縄までの旅のしるしが残されてあった
あもんはそこである衝撃的な出逢いをする

『なんじゃ~この木は!!?』
ノートに貼ってあった写真には神々しく大きい一本の杉の木が映っていた
『こんなぶちデカく亜熱帯チックな木が日本にはあるんか!』
あもんとジェーンは驚きを隠せなかった
その写真には“屋久島・縄文杉”と書かれていた

『うぉー絶対に行ってやる!この縄文杉に絶対に会ってやる!』
あもんは一枚の写真に興奮気味にこの誓いを立てて
まだまだ島国日本を走り続けてやると思った



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続く