セブンの女 11 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

この物語は『半フィクション』です
どれが現実でどこが妄想なのかは
読み手であるあなたが決めてください
この物語は1994年から1995年の
あもんの記憶の中の情報です
現在の情報とは相違がありますので
ご理解ご了承お願いします


“人を好きになるということ”
そこに過程は在るものではなく、直感が在るものである
“好き”と言う表現はそもそも理由なのであって
そこに理由を付け加えるのは不自然であると考える
『彼のどこが好きなのですか?』『優しいところです』
そんな問答は一時的には安堵感を与えるが
所詮、浅く薄い感情論であるとは言い過ぎだろうか
好きだから隣に座りたい、好きだから抱きしめられたい
というように、結果の過程にあるのが“好き”である
よって、好きな人に出逢うという行為に大切なモノは
己が信ずる直感のみであり
そこには“理由”を付け加える必要性は無い
隣に座りたいのはなぜ?好きだからです!
抱きしめられたいのはなぜ?好きだからです!
そんな問答がいたって健康的で紳士的である


あもんは好きになったからスミ子とつき合い始めた
好きになったからあもんはスミ子を抱きたいと思った


『えぇぇぇ あっくんとスミ子がぁぁぁあああ!』
一部始終を知った京ちゃんは驚きの表情を露わにした
『まっ、そういうことじゃ、京ちゃんに負けないぐらいのスピード決断じゃったぜ!』
あもんは誇らしげな表情を京ちゃんに見せた
『しっかし、あもんとスミ子がねぁ~んんん~まぁ、なんとかなるじゃろ』
『なんや!意味心な!そういえば、中学時代から知り合いらしいの~』
『そうじゃ、そうじぇけん、色々知っとるんじゃけど…あんな』
『いや!言わんでええ!オレは今のスミ子に惚れたんじゃ!過去のスミ子なんかはどうでもエエ!』
『明日のスミ子に惚れたるんじゃ』
『じゃけぇ~京ちゃん、言わんでくれ』
『そうかぁ~そんなら、ワシは何も言わん』
『まっ、あもんならなんとかなるじゃろ~』


“人を好きになるということ”
それはもちろん出逢ってからの過程段階での感情移入が大切である
出逢う前の過去は必要な要素とは言えない
二人が出逢って過すのは間違いなく未来であり
二人でタイムマシーンに乗って過去に戻ることはする必要性はない
二人の未来にとって糧になる過去なら語り合うことは大切なことだが
出逢ってすぐに過去をストーカーする行為は
今ある自分の感情を否定することになりかねない
未来を否定する生き方は損である
できれば過去を否定し未来を肯定する生き方をするのが賢いと考える



あもんが所属するツーリングチーム“R2”は活発的に活動をしていた
4年生であったヒメノさんやマツさんが卒業をしたが
この頃からR2のメンバーは段々と増加していった
アンチさん繋がりでモツさん、シッシーさん
あもんの同級生でむっちゃん、納豆、ゴーゴー、ザキヤマなどだ
今まではヒメノさんが先頭を務めみんなを導いていた
順番からするとあもんの先輩であるアンチさんがその役を務めるのだが

『ワシァ~先頭を走るようなタイプじゃないけん、あもんやってくれや』
『ワシはケツでみんなを助ける役が合うとるけんの』

とアンチさんの提案によりこの頃からあもんが先頭を走る役割となる
先頭の役割と言えばルート選択やスピード調整、休憩のタイミングなど計りつつ
みんなが退屈しないツーリングタイムを作る役割がある
そしてツーリングに重要なポストとなるのはケツ持ちである
ケツ持ちはみんなのスピードについていけない不慣れなライダーがいたりとすると
そのスピードに合わせて走り不慣れライダーに後ろにいるんだと安心感を与え
道に迷いそうになるとスッと前に入りルートに導く役割がある
よって先頭が導くルートを完全に頭に入れてチームをバラバラにさせないという仕事あるのだ
自らケツ持ちに手をあげたアンチさんには欠点があった




それは“よく寝る”ということだ




昼休憩の後ライダーに襲ってくるモノ
それは“眠気”である
単調なタイトカーブが続きバイクの振動が心地よく眠気を誘う
バイクを運転中であるためライダーは熟睡ができない
しかし、一瞬なら目を閉じることは可能である
一瞬目をつぶりハッと目を開けると“なんだ大丈夫じゃん”という甘えが生じ
その一瞬が徐々に長くなってしまう
もちろん、危険である
そんな時間帯にかかるとあもんは少しスロットルを開けるようにしている
そしてスピードにメリハリを加え緊張感を与え皆の眠気を覚ます努力をする
ケツ持ちはそのメリハリスピードに追従できない時もある
そんな時アンチさんはやってしまうのである
信号待ちであもんが止まった時、後方で“ガシャッツ!”と音がした
振り返ると急ブレーキでバランスを崩し立ちコケてしまったアンチさんのBIG1の姿が!


『おぅ!寝とった!』
とアンチさんはそれで目が覚めるのである
このようにアンチさんのBIG1には名誉の傷が多く刻まれているのである

あもんの学生生活はバイク生活となっていった




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そんなあもんのツーリングライフにスミ子は何一つ文句を言わなかった
『うん、分かった、行ってき』
毎週日曜日にツーリングに出かけるあもんをスミ子は笑顔で見送った
『せっかくの大学生活じゃけん、今できることをやった方がいいよ』
『それにお互い今までの生活を大切にしたほうがいいと思うんよ』
『相手に合わせて変る付き合いってウチは苦手じゃけん』
『でも、あっくんっていいな~好きなことがあって、それが出来るなんて』
『毎回、思うんよ。あっくん、段々と男らしくなっとるって』
『…でも気をつけんちゃいよ』

スミ子は毎週土曜日の夜にあもんに言った
男女がつきあうということ
それは今までのそれぞれの時間に二人の時間ができると言うこと
一日の時間は不変なものであるため二人の時間はそれぞれが創る必要性がある
『今までの時間の消去』それに苦痛を感じるカップルもいるであろう
あもんとスミ子の場合は少し違った
今までの生活を変えることなくお互いに想い人を添える程度の付き合い
二人とも独占欲は希薄で一旦、客観的に相手を想うことが心地よいと思っていた


スミ子は夜にスナック“セブン”で働いていた
スナックと言っても田舎の小さなスナックであり
お客はスミ子が小さい頃から可愛がってもらっているおじさんばかりであった
よって過度なサービスなど一切なく小さな町の大きな家族付き合いのような関係だった
あもんは昼間に学校やバイトに行き夜は寝ていた
よってあもんとスミ子の接する時間は少ない
スナックが終わるのは午前一時
でもスミ子は少し酔っ払いながらあもんの宿に毎日のように現れた

『あっくん、今日はどうだったん?』
あもんは少し寝ぼけ眼でスミ子と話をする毎日だった
スミ子とはスナックが休みの日に夜を過ごした
近場へツーリングに行き部屋に帰りTVを見ながら少し飲んだ
自然と二人の距離は近づき唇を重ねるようになった
スミ子は驚いた表情はせずにこの日が来るのを覚悟していたかのように強い瞳であもんを見つめた
その迫力にいったんは怯んでしまったものの、あもんの本能も活性化していた
スミ子の服に手をかけた時スミ子はあもんに言った


『あっくん、ウチの話を聞いて』
『ん、?』

あもんは一度動きを止めてスミ子をじっと見つめた
『ウチね、あのね…』
『どしたん?』























『ウチね、子供を… おろしたことがあるの…』
『こんな女でもいい?』


あもんは一時、白くなった
白くなったがあもんはこう答えた


『分かった…分かったけん』
『言ってくれて、ありがとう』


あもんはスミ子を強く抱いた
スミ子もあもんに一心不乱に答え乱れ始めた
あもんとスミ子はこの夜
ひとつになった






続く