あもんの帰郷 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉



2011年3月26日
大阪で仕事をしているあもんは急に母にメールした
『急ですが、駐車場が無くなったけん、明日、帰ります』
『晩御飯よろしく!』
あもんはいつもこうである
しかも今回は日曜日に日帰りコースである
実際に広島滞在時間は2時間に過ぎない
あもん母からメールが帰って来た
『急じゃね~でも、了解しました!』
『アイカちゃんも晩御飯食べに来るけんね』


一か月前に3歳になったアイカはパワーアップしているのかな?
そう思いつつあもんは車を広島へ走らせた


実家の玄関を開けリビングに入るとアイカはいた
アイカは丁度、自分用のおもちゃ携帯であもんに電話をかけている所だった

『もしもし、あっくん?はよう帰って来んちゃい!』
そう言おうと思った矢先にあもんが目の前に現れたのである
アイカはあもんをチラ見して少し距離を置く


そう、ここからがアイカの必要な時間なのである
数か月に一回ぐらいしか会えないアイカにとって
あもんとの再会に照れているのか?
必ずアイカは少し距離を置く
遠くであもんをチラ見している時間が続くのである
アイカはあもんへの電話を止めて
ひとりで買い物へ行っているママに電話をし始めた
話し声を聞かれたくないのか
受話器を手で隠しリビングの外でコソコソとママに電話していた

『もしもし、あっくんが帰って来たよ』

あもんを待ってくれていたのはアイカだけでは無かった
アイカの弟であるコータがバァバに抱かれて待っていた
あもんはまず、コータの顔を見た
生後5カ月となるコータはスクスクと育ち徐々に顔にも個性が出始めていた
アイカとは違い一重瞼で男らしい
性格もアイカとは違い人見知りをせず、よく笑うのである
『揚げ物するけん、ちょっとコータを抱っこしとって!』
バァバがあもんに言った
あもんはコータを抱いて『コータ、久しぶりじゃね~』と言った
あもんの肩にすがるコータ君はニコニコと笑いながら
風邪気味の為に出る鼻水をあもんの肩に擦りつけていた




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姉弟でここまで性格が違うのかと思うくらいコータは泣かない
ママがいない今でも、知らないおじさんあもんに抱かれても泣かない
多分、お腹が減っているのだろう、指をしきりに舐めていても泣かない
だた、唯一グズグズするのはあもんがコータを抱いてじっとしている時である
コータは抱っこしながら揺すったり外を見せたり家の中を歩いてみたりしないと落ち着きがないのである


“こいつもあもんと同じで旅人か?”と一瞬思った

コータを抱っこして家の階段まで行った時
そこにはアイカが座っていた

『パンダ組なんよ~』
アイカは近況報告から始めた
もうアイカタイムは過ぎている
ここからはアイカは自由奔放に動き出すのである


パンダ組とはアイカがこの春から通う幼稚園の組である
アイカが通う“つばめ幼稚園”は老舗の幼稚園であり
あもんやアイカママ(あもん姉)も通った幼稚園である
したがって親子2代でつばめ幼稚園に通うこととなる
アイカは次に最近のお気に入りのおもちゃを見せてくれた

『あっくん、見て~ミキサー車なんよ~』
アイカがコロガしているのはミニカーである
女のくせに男のような趣味である



『アイカ、何歳になった?』あもんはアイカに聞いた

『2さい!』
ん!?そんなことはないであろう…
つい先月に3歳の誕生日会をしたはずだろう
さっき、嬉しそうにその時のケーキの写真を見せたじゃないか!

若干、3歳にしてもうサバを読むことを覚えたのか!!?

バァバが解説をした
バァバとママは日頃から“3歳になったら幼稚園に行くんよ”とアイカに言っていたらしい
しかし、人見知りが激しいアイカはあまり幼稚園に行きたくはないらしい
だからアイカは自分がまだ2さいだと主張する
さらにアイカは自分がお手伝いをしたくない時には
『アイカはまだ大きくないけん、できんのんよ』とか言ってサボるのだ

早くも要領の良い女になりつつあるのか!!



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(結局、楽しく幼稚園に行っているみたいです♪)


そう言えば、数ヶ月前にこんなことがあった

アイカママがコータの出産準備の為とアイカの親離れ練習の為に
アイカは一時期、保育園に行くことになった
もちろん、アイカはママと離れるのは嫌である
さんざん泣いたあげく人見知りをするアイカはひとりぼっち…
先生が呼んでもあまり友達の所には行かなかった
しばらくひとりで遊ぶアイカ
その内、慣れるであろうと先生は遠くから見ていたらしい
すると流石にアイカも動き出したのである
そしてアイカが向っていったのはアイカと同じように一人で遊んでいた友達だった
その友達は不幸にも少し障害のある子であったらしい
アイカはジワリジワリとその友達に近寄り話し始めた
大人では理解不能な宇宙語で話す二人
アイカは分かっているのか分かっていなのかその友達を選んだ
不自由な友達の手を取ってやり二人で歩いた
無口な友達に宇宙語で話しかけた
それを見た保育園の先生は“なんて優しい子なんだ”と涙したと言う


アイカママ(あもん姉)が帰って来た
するとあもんの肩でニコニコしていたコータ君が騒ぎ始めた
音が聞こえるのか匂いで分かるのかどうか分からないが
コータ君はいきなりぐずり始めたのである!
加えてアイカもママに寄り添い『抱っこー』という
アイカママはセオリー通りにまずアイカを抱っこしてやって
コータ君にご飯をあげ始めた


コータ君を手放したのであもんは2階へ上がり持って帰るモノをかばんに入れていた
するとアイカがひとりであもんの部屋にやってきた
この部屋はアイカがあもん家に泊る時の寝室になっている部屋である
アイカの布団やおもちゃがこの部屋にはある
アイカはあもんの傍にくっつき、

『あっくん、あっくん、あっくん』と必死に話している
時折、あもんのことを『パパー』と言ってしまい
『ウフフフ、アイカね~今、間違えたんよ』と笑う
そして要所要所でアイカはあもんに言うのである
『アイカね~あっくん好きなんよ♪』



アイカはもうすでに男を落とすテクニックを身につけているみたいだった




『あっくん、しっこ!!』
アイカは突然言い出した
おしめが取れたアイカはしっこを我慢していた
まだひとりでは行けないらしい
あもんはすぐさま下に降りバァバを呼んだ
するとアイカは『あっくんとしっこする!』と言って聞かないのだ


アイカ!分かっているのか!
あもんは男だぞ!!


そんなことは全く気にしない様子だったのであもんはアイカのパンツを脱がせた
便座にちょこんと座ったアイカはあもんに言った

『昨日ね、前見てしっこしたら、ビーーーって出たんよ』
『バァバの顔にビーーーってかかったんよ。ウフフフフ』






アイカ!それだけはやめてくれ!!
ビーーーと前には出さないでくれ!!


あもんは必死にアイカの頭を押さえ下を向かせたのであった
終わった後アイカはしっかりと手を洗いあもんはパンツを履かせた
するとアイカはズボンも履かず便所から出ていき
バァバに報告した
『アイカね~あっくんとしっこしたんよ♪』


あもんはタジタジである

晩御飯の準備ができた
あもん家の晩御飯はアイカが来た時にはリビングで行う
『アイカはどこに座るん?』
アイカママが聞いた

『あっくんの隣に座るんよ!』
ん!?いつもはママの隣じゃないと機嫌が悪いのに
今日はどうした?アイカ?
ジィジ,バァバ,パパ,ママ,コータ,あっくん
アイカを中心にあもん家が囲い座り食事が始まった
アイカは大好きなパリパリサラダを目の前にして
『ママ~ドレッシングかけて~』
アイカはわざわざ遠くに座っているママに甘えた
しかもママはコータを寝かしつけている最中である
『あっくんにかけてもらいんちゃい』ママが言った
『いや~ママがいい!』
意味が不明だが、これだけは譲れないらしい…
『じゃぁ~ちょっと待っときんちゃい!』ママが答えた
『うん』と言ったアイカはみんなが食べ始めたのにママをずっと待った



『ウフフフ』
アイカの得意な含み笑いはこの食事中に絶好調だった
ご飯が美味しいのかアイカは終始ご機嫌である
ご機嫌なアイカはご飯をこぼしながらも一生懸命食べていた
するとアイカは自分のこぼしたご飯があもんの服についていることに気がついた

『あっくん、ごめんね…』
『あっくん、はよう、パジャマに着替えんちゃい!』

そんなアイカにあもんは言った
『もう、帰るけん、着替えんのんよ』
『うん、あっくん、どこに行くん?』アイカが聞いた
『大阪に帰るんよ』

『お・お・さ・か?』
アイカは多分この時初めて“大阪”という単語を覚えたのであろう
そして、“あっくんは大阪から来て大阪に帰る人”と初めて認識したのであろう
あもんは付けくわえた
『新幹線で大阪に帰るんよ』

『新幹線!!!』
アイカのテンションはこの時一気に上がった
アイカは新幹線に乗ったことはないのだが
以前にあもんを迎えに広島駅まで来た時に初めて見た
初めは“じ~と”辺りを観察しおとなしかったが
徐々にこの大きくて変なカタチの乗り物がホームに入って出ていく姿に興奮し始めた
アナウンスと音楽が流れると“スーと”静かに入ってくる新幹線
ベルが鳴り動き出し徐々にスピードを上げていく新幹線
何分かおきに両ホームに入ったり出たりする新幹線
アイカにとってはどれも新鮮で興奮する光景だったのであろう
あもんが新幹線から降りてきても見向きもしなかったアイカは
持ってきたぬいぐるみに向って“新幹線が出るよ~”と教えてあげていた


『アイカもね~新幹線で大阪行くんよ~』
アイカが急に言い始めた
アイカは家族一人一人にそう言って回っていた
新幹線に乗りたいではなくもう乗ることを勝手に決めてしまっているアイカ
その真意は未だに謎であるが
この時からアイカのテンションは最高潮に達していった


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『あっくん、キキィ、探しに行こ!』
アイカは突然、言い始めた
『キキィって何なん?』あもんはその正体を知らなかった


『ん、キキィはね~アイカの大切な友達なんよ』

と言いながらアイカはあもんを家の中を連れ回す
『おらんね~』とアイカは家じゅうを見渡す
あもんは何かのアニメのキャラクターなのかと思ったがどうやら違うみたいだ
アイカは天井の方を見て探していた
そして、アイカはキキィを見つけたのである

『あっ、キキィがおったよ~あっくんの肩に乗っているよ~』

『!??』
あもんの肩には何も乗っていない
しかしアイカはあもんの肩にキキィが乗っていると言う
意味が分からなかったあもんはアイカママ(あもん姉)に真相を聞いてみた
キキィとは多分、鳥であろうとママは言った
いつもそばにいるママでさえ見えることはないキキィは
アイカの妄想の友達であるらしい
アイカにしか見えない友達であるらしい


何!!若干、3歳にしてもう妄想の術が使えるのか!!
あもんが30歳前後にしてようやく手に入れた妄想術を!!
こいつは詩人になれる!
もしくは空想画家になれる!!


あもんはこの時アイカの未知なる才能に少し嫉妬してしまっていた

あもんの見送りはママとアイカがしてくれることになった
帰り際にアイカは自らあもんの膝の上に乗ってきた
自ら乗ってきたのはおそらく初めてであろう
あもんはヨシヨシとアイカを抱っこし肩に担いだ
そしてアイカを逆さにして抱っこしてみた
『アハハハハ』と笑い始めるアイカ
アイカはそれが楽しかったみたいだ
アイカはあもんから離れるとバァバの所に行き早速報告をした
『アイカね~あっくんに抱っこしてもらったんよ、あはははは』
『そうね~よかったね~』とバァバは答えていた



見送りの車中でもアイカはよくキキィを見つけた
ビルの上や信号の上、ピカピカ光るウインカーの光の中など
キキィは街にもよく現れるらしい
『キキィがいるよ~』と言うアイカに
アイカママは無視することなく必ず答えてあげていた
『ほうかね~いっぱいおるね~』
『アイカね~あっくんが見送るんよ~』アイカはママに報告をした
『“あっくんをアイカが見送る”でしょ』ママはアイカに優しく教えてあげた
『うん』アイカは素直に頷いていた


あもんのたった2時間の帰郷はこうして終わった



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(鼻水コータ君ですw)


アイカはあもん家にとって待望の初孫であった
それは長男であるあもんが未婚であるというのが一番の原因ではあるが
あもん姉の長い不妊治療の末の子供であったことも理由のひとつであろう
近所に住むあもん姉は高齢出産と初の子育てが不安なためによくあもん家に来ていた
その流れでアイカもよくあもん家に来ていた
よって、バァバとママの二人に育てられた子供である
アイカにとっては家が二つある感覚であるに違いない
お陰で抱き癖がありとワガママで寂しがり屋に育ってしまったが
お調子者だというのは誰の影響かは分からない
アイカにとってあもんは

“数カ月に一回、大阪から来て大阪に帰る人”であろう
いつもはいない“あっくん”の存在を植え付けたのはバァバとママである
あもんが実家に帰るとメールをすれば
それは直ぐにアイカにも伝わりアイカはあもんをいつも家で待っていた
そしてアイカはあもんの前でいつもテンションがマックスになっていく
聞くと最近は両家族が多忙でありみんなが揃ってご飯を食べるということはないらしい
しかし、あもんが帰郷することによって
バァバはいつも作らないあもんが好きなひじき等を作り
食卓に家族全員のご飯を並べる
そこに座るジィジ,バァバ,パパ,ママ,コータ,あっくん
アイカを中心に座るあもん一家
アイカはきっとこの光景が好きなのであろう

“みんながいてみんなでご飯を食べる”
そんな単純な光景が好きなのであろう
だからアイカはいつもテンションがマックスとなり
あもん家全員に元気玉を放っている
その元気玉があもん家全員の明日からの元気となっているのは間違いない




$あもん ザ・ワールド

(ナイスピース!アイカ!!)


そしてこのアイカの意志を継ぐ者がもうひとりいる
アイカの弟であるコータである
このコータがこれからもっと大きな元気玉を放ってくれるのを
あもんは期待しているのである



$あもん ザ・ワールド

(ナイススマイル!コータ!!)