あもん史 第五十章 演舞 第三節 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

あもんの演舞は終わり
次は団長たっひーの演舞であった
たっひーは創作演技を演舞する


たっひーは団長であるゆえに
応援団全員を見ていかなければいけない
どの行事でも団をまとめるのは団長の仕事であり
団の象徴として団の前に立つのが仕事である
“団長絶対主義”という海田高校応援団の伝統があるゆえ
団長と言うのは全団員がついてきてくれる男にならないといけない


言わば、団長とは暴走できない立場なのである

暴走団長には誰も付いていくことはないであろう
よってたっひーは伝統を重んじつつ
第30代が目指しているゴールへ導かなければいけない
あもんとEIGは“大応援団”を創造するために多くの伝統をぶち壊していった
我等の代で新しいことをやることに情熱を注いでいたのである
それらをまとめ『それはダメだ』と言えるのはたっひーだけである
だけど、たっひーは団長承認が下りなくても次々とチャレンジする2人に
実際は困惑していたのかもしれない


長というものは
組織の目標を明確に定め
部下の可能性を最大限に引き延ばし
部下の失敗を全て背負う覚悟がいる人である
かつての多くの組織の中で
長の暴走により飛躍した組織で
長続きした例は無い
長というものは
本当は不自由な立場なのである


そんな団長の仕事をしていたたっひーは
この最後の演舞で創作演技をやる決意をした
正直言うとあもんは『そんな時間があるのか?』と危惧をした
だけどたっひーにはたっひーの応援道がある
それの証明を団長としてではなく応援団員として演舞したかったのではないかと思う

たっひーはこの演舞の中でこう語っている


人に拍手をしてもらい
声を出してもらい
一緒に応援するために
自分たちはどうするべきなのか
いつも人の立場に立って考え
海高生の応援団を常に目指してきた



たっひーはたった一人でステージに立った
海田高校応援団員たっひーの演舞である
鼓手はあもんである
先ほどの喧嘩太鼓によりあもんの体力は限界に来ていたが
あもんは親衛隊長である
例え腕がちぎれようとも太鼓を叩くのがあもんの仕事である
あもんはたっひーの演舞を応援した


第30代海田高校応援団演舞
『創作演技・舞』




多くの応援団らしくない動きをするあもんやEIGに比べ
たっひーの演舞は“突きと乱打”を表現したに過ぎなかった
演舞に一番大切でかつ一番難しいもの
それは“静と動”の対比と調和である
それらは多くの応援団演技で受け継がれているのだが
たっひーは敢えてそれを昇華しようとした
まるであもん達に対して
応援道の本質を改めて教えてくれたようであった
この演舞は一般受けをしないであろう
目の肥えたOBにも受けることはないであろう


だけど第30代団長たっひーとの付き合いが長いあもんは
この演舞の本質を感じている


たっひーは唯一応援団長が主役となれるこの舞台で
応援団員を貫いたのである



あもん史 第五十章 演舞 第四節へ続く