紀伊を往く⑧ | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

古来、日本国は大和と呼ばれていたと云う
大和魂という言葉を調べたら
日本人固有の実生活上の知恵や能力
と記されていた
大和魂は一体、何処にあるのだろう?
そう思ったあもんは靴を履いた
古から続く大和の知恵や能力は
今でも確かに此処にあると信じて
大和人には大きく和む知恵と能力があると願って
あもんは今日も大和を放浪する


大和放浪記
紀伊を往く⑧
2010年4月3日


新宮市を引き返し、R168を北上した
R168は熊野川に沿って走っている道路であり
本宮を経由し奈良の五條まで続いている
熊野川は紀伊山地の北部から本宮を経て南流し
熊野灘へと注ぎ込む流域面積2360km2、全長183kmの大河である
かつては本宮から新宮までのメインの交通手段といえば
この熊野川の舟運であったそうだ
ちなみにこのルートも“川の参詣道”として世界遺産に登録されている




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この道を走っていると時折、壮大な奇岩に遭遇する
これらの奇岩怪岩は“熊野権現の持ち物”として崇められているそうだ
しかし、今日はよく熊野、熊野と言っている
クマとは“奥まった処”や“隠れたる処”との意味があり
そこは上座であり聖なる地とされている
クマとカミは同じ意味があり“熊野”は“神の野”で
神々が住まえる地として言い伝えられている



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もう昼も過ぎていたのであもんはお腹が減っていた
『ほんじゃぁ、クマをカミますか!』と
あもんは定食屋で熊野牛の焼肉定食を注文した



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食後に散歩がてらに熊野川に下りてみた
釣り人がいたので話しかけてみた



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『ここで何が釣れるのですか?』

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『ちょっと聞いています?』

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釣り人は無口に微笑んでいるだけだった…

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R168からR169に入り和歌山県北山村へ向かう
北山村は全国でも唯一の“飛地の村”であり
和歌山県でありながら三重県と奈良県に囲まれている
和歌山県から向かっても奈良県と三重県を通って和歌山県に入るという
とても珍しい村なのである
この村は昔から新宮市と深い関わりを持っていたため
明治の廃藩置県の時も平成の大合併の時でも
“我々は和歌山県人である!”と主張し続けている立派な村である
現在は和歌山県で唯一の“村”となっているらしいから存在価値は大きい
あもんは今やこの国は“村”が珍しいという時代になっていると思った



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この村の有名スポットと言えば瀞峡である
“どろきょう”と読むのだが名前とは正反対な渓谷である
奈良、三重、和歌山に跨る国特別名勝の大渓谷であり
太古の幽水美が今でも残っている
多くの歌人もここで歌を詠っている



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R169を走っていると
『奈良県に入りました』と
車載ナビのエージェントである“日向エリちゃん”が言った
すると五分後、エリちゃんは『和歌山県に入りました』と言った
エリちゃんは大忙しである
瀞峡トンネルという長い長いトンネルを走っていると
『三重県に入りました』とエリちゃんは言った
数秒後『和歌山県に入りました』とエリちゃんは言った
さらに数秒後『奈良県に入りました』とエリちゃんは言った




エリちゃん、迷っていないか?
エリちゃんはもういっぱいいっぱいである



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エリちゃんの頑張りのお陰でようやく瀞峡に着いた
ここは分かりやすく言えばこんな感じである



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しかしこの瀞峡は船で遊覧するのが最適であり
細い山道からでは瀞峡は満喫することはできない
あえて道を造らなかったからこそ瀞峡は瀞峡であり
これからも瀞峡であり続けてほしいと思った


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あまりここに長くいると
エリちゃんから苦情が出そうになったので
あもんは再びR168を北上することにした


本宮を通過し更に北上をする
『奈良県に入りました』
落ち着きを取り戻したエリちゃんが言った
十津川の谷瀬のつり橋に辿り着いた




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谷瀬のつり橋は日本有数の長さを誇る鉄線のつり橋で
長さ297m,高さは54mもある
昭和29年生活用のつり橋として架けられた橋であるが
今となっては観光スポットになっている
あもんがここに着いた時には日も傾き始めていた
よってつり橋には誰もいなかった



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時折、風が吹いている
小さな風で大きく揺れる
キシリ、キシリと床板が軋む
じっくり橋を眺めながら歩いていたら
この床板が抜けたらとか
強風が吹いたらとかの邪念が頭をよぎった



あもんは引き返した
決して怖くなったからなのではない



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あもんは大学生の頃にここに訪れたのだが
その時は何も臆せずこの橋をスイスイと渡った
泣きながら渡っていた女性を心配する余裕もあった





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人間は年を重ねると臆病になる

もう、日が暮れそうだだからとか
一回渡ったことがあるからだとか
そんな言い訳で自分を納得させようとしていた


ちなみに、この橋はカップルで渡るとアツアツになれるらしい
怖さのあまり手をしっかり握り密着度が高まり
その上、男の度胸を証明できるからである
あもんは『さぁ誰か一緒に渡ろうよ!』と後ろを振り返ったが
あもんはひとりぼっちだった
だから、今日はこの橋を渡らない
今度、彼女ができたら一緒に渡るからねと無理やり納得させた



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そんな小芝居をしていたら
隣接する展望レストランにいたカップルと目があった
彼らはクスッとしていた
だから、あもんもクスッと返した


クスッとしたついでに
和歌を詠んだ


歳重ね
懸け橋渡り
肝くだく
行くし戻れし
山笑うやう



もう夕方6時を回っていた
そろそろ、帰ろう
R168を五條市まで走り
そこからR42で和歌山市へ向かった


無事に家に着き、今日の旅の反省会をした
AM7:30出発 PM9:00着
走行距離 450km
まずまずである
昔のあもんのペースである
地図で今日の旅路をなどってみたら
和歌山県を一周していた


達成感を満喫し
焼酎で乾杯をした後
年を重ねたあもんは
直ちに深い眠りに入った