あもん史 第三十九章 情熱 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

あもんはよく
THE BLUE HEARTSの『情熱の薔薇』を唄っていた



♪答えはきっと奥の方 心のずっと奥の方
♪涙はそこからやってくる 心のずっと奥の方
「心の奥ってどこなんだ?」と考えながら唄っていた



公式戦が近づき
第30大応援団の改革は順調に進んでいった
試合日の告知や臨時応援団員の召集
ブラスバンドとの合同練習
そして緊張の中第1回戦が始まった


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初めての試みであるこの応援形態
観客も昨年とは違う応援形態に始めは戸惑っていたが
歓喜を生み出す応援を
野球部の細部なプレーによって導き出すことにより
観客は徐々に応援団の一員になっていった
大声を出して応援をする
観客の後ろには応援団がいて
観客の前には応援する野球部がいる
マウンドとスタンドを包み込んだ海田高校の大応援団には
もう恥じらいという言葉は無かった


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ただただ勝って欲しい
我々の海田高校に勝って欲しい
その熱き情熱が
夏の猛暑を凌ぐほどに沸騰した時
海田高校大応援団は出来上がっていた




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第1回戦は見事に
海田高校が勝利した


失敗と成功が交差する応援結果だったが
確実に次へと繋がる成果が出たとまずまず満足をした

『100点満点は不要である 80点ぐらいが丁度いい』
幹部の誰かが偉そうに言った


迎えた2回戦
観客動員数は遠路にも関わらず
数百人を超えた
1回戦の応援の結果
あの情熱を再び燃え上がらせたいと願う
そんな海高生が多く大応援団に加わっていった



9回表 
得点は海田高校がリード
その時である
連投のエースが突然乱調となった
同点にされ、そのまま延長戦となった
スタンドには残念ムードが流れていった


野球の応援はリーダーの技量によって決まる
どれだけスタンドを一つにまとめ
大歓声を野球部員に与えられるかで決まってくる
よって得点を入れた時はリーダーのお陰であり
得点を入れられた時はリーダーの責任である




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野球の応援のリーダーは回毎に変わるようになっている
団員の少ない第30代は自然と9回までいくと2巡するようになる
炎天下の中、誰もが体力は消耗していた
ボブ西,EIG,あもんの3人は団長のもとに駆け寄った

『リーダーは俺にやらせろ!』
このまま、負けてたまるか
俺のリーダーで勝利に導いてやるぜ
幹部3人はみんなそう思っていた


ピンチである時
力となるもの
それが『応援』である
ピンチを救うのは
応援の情熱なのである




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海田高校応援団は
応援団歌である
『第一応援歌』をこだまさせた


『第一応援歌』
作詩、作曲者:不明


おお若人の 血は踊り
青春の日々 此処に燃ゆ
戦わんかな 勝たんかな
黒金の腕  愛撫して

立て丈夫よ 我が健児


おお海田 海田
陸の覇者 海田

紺碧の空に いざ高く
母校の旗を 掲げんかな





あもんは小学,中学時代は野球部員であった
引っ込み思案だったあもんを活発にしてくれたのは野球であり
野球が少年に与えてくれる大切なものを十分わかっていた
しかし高校生になり惜しげもなく野球をやめた
応援という立場から野球に情熱を注ぐことに決めたのだ


ユニコーン 
『デーゲーム』




野球部がピンチである今
あもんは10人目のプレイヤーとして代打に立つ事はできない
あもんは抑えの切り札としてマウンドに立つ事もできない
だったら あもんは今 何ができる?
応援である
勝って欲しいという想いを伝える応援である
遠くにいるあの人に元気を与える応援である
応援しかないのである
今はもう応援団という肩書はいらない
型も規律も破り
ただ、我武者羅に応援をする


残念ムードがスタンドに漂う中
あもんがリーダーに立った


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『まだまだ、これからじゃけんの~』
あもんはグランドに叫んだ

『お前ら 今こそ お前らの力が必要なんじゃ』
あもんはスタンドに叫んだ







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延長戦の末
海田高校は
負けた…




野球の応援が終わった後
野球部員と応援団は整列し対峙する
野球部員は一斉に帽子を脱ぎ
『ありがとうございました』と礼をする
応援団は
『押忍』と礼をする





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最後の挨拶が終わった静寂の中
あもんは
泣いた
本気で泣いた
多くの観客が見守る中
溢れだす想い
涙が止まらなかった
そして
野球部員と応援団は
抱き合った
抱き合って共に涙した


あもんは涙を流しながら言った

野球部のみんな…
ありがとう…







『情熱』という言葉は決して
昭和の死語ではない
若者よ
血が燃え尽きるまでぶつかり合ったことはあるか
若者よ
涙を宝石と称えられるまで本気で泣いたことはあるか
若者よ
信じぬいた道を共に歩み転んでくれる朋はあるか


『若き血の燃え上がるをもって
 これ 人の道と心得たり』


応援団と野球部員は
この言葉を一生忘れないと誓った




The Checkers
『 Friends and Dream』


チェッカーズ フレンドアンドドリーム

この曲を聴くといつもあの時の情熱を思い出す


『我ら 母校を出るとも 
母校は 永遠に 我らが母校なり』


この曲を聴くといつもこの言葉を思い出す