あもんと耳をすませば
2009年11月30日
先日、めずらしい女の子から連絡がきた
『あもん君?私、しずく。最近いろんなことがあってさ、頭の中ぐちゃぐちゃなの!今度相談にのってくれない?』
あもんが妹のように可愛がっているこの女の子の名前は月島雫といった
月島雫は高校受験を控える中学3年生だった
最近、天沢聖司という彼氏が出来たらしい
あもんは言った
『ええよ~じぁ~見せたいものがあるけん、今度一緒に出かけようか~』
あもんと雫の旅が始まった
『雫、どうしたん?受験の悩みか?それとも姉ちゃんと喧嘩したんか?』
『ううん、そんなんじゃないの‥』
『うふん、まっ、ちょっと歩くけど行こうか!』
あもんと雫は坂を登り始めた
『ここは猫の細道って言ってさ、いろんな猫がいるんだ。もしかしたら男爵もいるかもよ』
『わ~おとぎ話の国みたい!!』
『なっ、猫がいっぱいじゃろ~落ち着くまでちょっと歩こうか』
『あ~男爵いた~~~』
『男爵、お久しぶり!』
『男爵、今の私、素直じゃないよね。かわいくないよね』
『あそこに茶店があるけん、落ち着いて話そうか?』
『うん』
あもんと雫は茶店に入った
『ここはね、本がたくさんあるんじゃ。志賀直哉って知っとる?彼の本がたくさんあるんよ』
『知ってる~でもお母さんが雫にはまだ早いって言っていた!』
『でも、ここって落ち着くね~』
『じゃろ~』
『ねぇあもん君。わたしこの前、杉村に好きって言われちゃった。杉村とは昔から仲良しだったから好きだったけど、好きとかそういんじゃなくて。それにね夕子が杉村のこと好きなんだよ。でもね、わたしは聖司君が好きなんだし‥』
『あぁ~もう学校行きたくな~い!明日なんて来なければいいのに!!』
あもんは言った
『雫、明日って何であるか知っとる?』
『それは今日の問題を解くためよ。今日の悩みは明日きっと解決する。明日がダメならあさってかも知れん。解けない問題なんて無いんじゃけぇ。今が苦しいんなら、明日に挑戦してみりゃいいんじゃ!』
『それに雫は聖司が好きっていう答え持っとるじゃん。それが本当に正解と思うんなら、杉村と夕子と聖司に素直に伝えればいいことなんじゃ』
『“あしたはきっと”と強く願えば、明日はこわくないんじゃけん!』
あもんは詩を詠んだ
あもん詩集~スナフキンにあこがれて~より
『あした』
あもんと雫はまた坂を登りだした
『ねぇねぇ、あもん君。聖司君ってさ、バイオリン作りの職人になりたいらしいの‥今、イタリアに実力試しの修行に行っていて、卒業したら留学したいんだってさ』
『すごいな~と思うけど、なんか好きな人がどんどん遠くに行っちゃう気がして。だって私なんか何もないでしょ!行きたい高校も見つからないし、今だってあもん君とちょっと坂を登っただけでしんどいんだもん!』
『ん~しんどかったんか?じゃぁ、あもんがおんぶしてやるよ!』
あもんは詩を詠んだ
あもん詩集~ティーンに捧げる宝物~より
『おんぶ』
『そんなのずるい!お荷物なんてやだ!』
雫はそう言ってひとりで坂を登り始めた
『なんだ。大丈夫じゃん』
あもんはそう呟いた
雫はそれから
自分の登って来た坂を振り返りつつ
どんどんひとりで登っていった
『ねぇ、あもん君。カントリーロードって曲知ってる?今、友達に頼まれて作詞しているんだけど、全然自信がないんだ。自分が歩んでいる道も分かっていないくせに、いい詩なんて書けるわけないよね』
あもんは言った
『道ってさ、辿り着くためにあるんじゃけど、辿り着いたらそれで終わりじゃん。思わず近道を見つけて早く着くこともあるよね。苦労して辿り着いて“な~んだ”ってのもあるし。』
『道ってさ、歩いている時が楽しいと思わない?一歩一歩を確実に感じたり。わざと寄り道してみたりしてさ。今歩いた道もいろんな道があったじゃろ。苦しかったけど楽しくなかった?苦しかった道のりって振り返るとなんか笑えるじゃん。』
『苦しい時は笑えんけど、明日なら笑えるけんね』
『それに新たに広がる道ってなんかワクワクするよね』
『この道見て見て!なんかこの先は宝物がある気がするじゃろ?』
『うぁぁああ~おとぎ話の道みたい!!!』
『雫は夢持ってるの?』
『うん、小説が書きたいの』
『聖司君にも詩の才能があるって言われたし!』
『え~すごいじゃん、じゃぁその詩を歌ってよ』
『だめ~~私、おんちだもん!』
『ちょうどいいじゃん。あもんのハーモニカもへたくそじゃけん』
『さぁ一緒に歌おうや!!』
あもんはハーモニカを吹いた
『カントリーロード』
あもんと雫は坂を登りきった
『雫、見てみろよ。ここはあもんのお気に入りの場所なんじゃ。な~んかチッチャイものがいっぱいじゃろ。世界遺産と比べたらスケール小さいけど、逆にそれがいいんだ。遺産になったらもうそこで保存し始めるからね。この街はまだまだ未完成だから、もっともっと素敵になるんだ』
『雫だって聖司だってまだまだ未完成だから素敵なんだ』
『これからもしっかり自分の物語を書き続けてみなよ』
『うん、分かった。小説がんばってみる。書きあがったらおじいちゃんの次に読んでね!』
『おう、やってみろ!いっぱいいっぱい、ぬり絵してみろ!今は発展途上国な雫は明日からが楽しみじゃね~』
あもんは詩を詠んだ
あもん詩集~ティーンに捧げる宝物~より
『ぬり絵』
その後に雫と聖司は結婚をした
そして雫が綴った『猫の恩返し』という小説が映画化された
あもんは今でも遠いところから
雫に風を贈り続けている
雫は今でも、耳をすましてくれているのかな?
“風になったあもんの言葉”を
出演
あもん
月島雫(友情出演)
朗読
あもん
演奏
あもん
演出
あもん
撮影
あもん
脚本
あもん
編集
あもん
監督
あもん
制作
あもんがいっぱい制作委員会
スタジオあもん作品
次回予告
平成21年12月4日
にいちゃんはまだ死んでいなかった
毎年、この時期になると聞こえてくる
あの年の冬
君はきっと寒かったんだろうね
にいちゃんはまだ
死なないよ
『火垂るとあもん』
何度も
何度も
平和学習はするべきである