あもん史 第二十五章 妄想 | あもん ザ・ワールド

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君へと届け 元気玉

大きく背伸びをしてみても
太陽には全然タッチできないから
今は大きな根を張って
大器な大樹を夢見るお年頃


高校生

高校生は数多くの妄想を抱く







応援団の部室は選択教科の教室棟の裏にあった
そこに連なる3つの部室は
柔道部,空手部,応援団だった
そこに連なる3つの部室は
柔道部,空手部,応援団だった
そこは甘酸っぱい臭いが漂うエリアだった




応援団と柔道部は練習後よく顔を合わせていた
よって必然的に距離は縮まっていった
整然と片づけられていた応援団の部室とは異なり
柔道部の部室は雑然とされていた
部室に入るとなぜか部室いっぱいの机
机の上には畳が敷き詰められ
茶室のような天井空間に誰もが癒される
癒されたら寝ころぶしかない
甘酸っぱい香りの中、あもん達は川の字になって寝ていた

机の下の空間には
部活道具に混ざり
歴代の先輩方が残された
べっぴん集や通信集などが収納されていた
甘酸っぱい香りの中、あもん達は川の字になってその雑誌を眺めていた
貸し出しは自由である
持ち込みも自由である
優しい海田高校の先輩の好意をあもんたちも確かに受け継いでいた







高校生は数多くの妄想を抱く





校庭でのトラックチャリレースが流行っていたあの頃
あもんと愉快な仲間達はあることに挑戦していた
『一台の自転車に一体何人乗れるのだろうか』
誰かが言った疑問符に果敢に挑むあもんと愉快な仲間たち
前カゴを椅子型に変形させ
後ろ荷台にはシートを取り付け
漕ぎ手は立ち漕ぎというルールを定め
前カゴ,立ち漕ぎ,サドル,荷台×2
『一台の自転車に5人は乗れる』
あもんと愉快な仲間が導き出した答えだった


記録を達成したこの自転車には華がなかった
『よし!このチャリは女性だ』
あもんと愉快な仲間は満場一致で決議し
このチャリを彩ることに決めた
当時、あもん達のアイドルであった
『星野 ひかる』
彼女は週刊誌と月刊誌を騒がせたあもん達の憧れであり
貸し回されたダビングビデオが紛失するという事件も数多く発生していた
彼女は当時数えきれない男子を出させたといっても過言ではないだろう
アイドル星野ひかるのポスター旗にしてをチャリに装着
あもん達のドリーム号は完成した


さて、ドリーム号で校内凱旋だ
この時の乗車人数は3人
あもん,EIG,ボブ西の3人乗りだった
EIGが前かご,あもんが立ち漕ぎ,ボブ西が荷台のポジショニング
座席の構造によりEIGとあもんは対面する形となる
悠々と校内凱旋を行っていた




その時である
前かご配置のEIGが足の置き場がないため
ついつい足をチャリキー部分にかけてしまった時である
『カチャッツ』とチャリキーが掛けられたのである
それは悠々凱旋中の出来事である
走行中のチャリの前タイヤは完全に止まり
前のめりになったチャリが迫ってきたEIG
瞬間的にEIGはチャリのハンドルを握りチャリを持ち上げ投げたのだ!
完璧なる巴投げである
チャリ,あもん,ボブ西の1台+2人を巴投げたのである!
飛んでいく1台+2人
万有引力に抵抗した1台+2人


事件後、3人は笑った
大笑いした
大笑いするしかなかった
事件後
ドリーム号は大破した










ノリという朋がいた



彼はあもんの一年の時からの朋で柔道部員である
彼もあらゆるものに憧れを持つ同志だった
サザン信者な彼は電話をかけると電話越しに弾き語り
あもんのリクエストである『女 呼んでブギ』という名曲にも
『おお マニアックやの~』と電話越しライブは開催されていた
あもんの生涯初である野宿旅のお供も彼であった
蚊に刺されながら岡山県のインターチェンジ付近芝生で初夜を迎えた
『自分が一番』という意味の無い自信を持ち続けた彼はいつもあもんにこう言っていた
『俺を目指せ!』
高校卒業後、年賀状で10年間は言い続けていた
あもんはそのときいつもこう言い返す
『お前こそ 俺についてこい!』 と







大ちゃんという朋がいた






彼も柔道部員である
0.1tという体格から誰もが柔道部員であることを疑わなかった彼であるが
彼にはこのエリアに漂う甘酸っぱい香りは無かった
俊敏な動きを武器にしたさわやかな戦士であった
彼もあらゆるものに憧れを持つ同志だった
同時に彼はあらゆるものに勉強熱心だった

ある時あもんと愉快な仲間は“男子すること”について語り合っていた
その時、大ちゃんは教祖の様にこう提言をした
『満月の夜、裸でブリッジをし、窓越しに満月を眺めながら“男子する”ことが至高の業である』
あもんは大ちゃんを神と称えた
いち早くエコに目覚めた大ちゃんはこうも提言をした

『夜な夜な消滅するティッシュは環境破壊の一環である』
『これを食い止めるには皿に出すしかない!』
大ちゃんは夜な夜な皿洗いをしていたらしい
そんな大ちゃんに戦いを挑んだのはボブ西である
1週間にどれだけ多く“男子する”ことができるか競い合ったのである
結果はカメラフィルムに入れ冷凍保存した量で決まるらしい
結果はあもんは知らない
神の戦いには人間は関与することができないからである









ある時
あもんと愉快な仲間達は驚愕した





『すごい高校生がいる!』



それは天才たけしの元気が出るTVに映っていた
スーパー高校生 『イマキタ加藤とメロリンQ』








あもんと愉快な仲間は憧れた
スーパー高校生に憧れた
そして誰もが思った
『そうか~ 脱いで踊ったらウケルのか~』
あもんと愉快な仲間の伝説はこの時から始まった‥








高校生は数多くの妄想を抱く