あもんの職場は建設現場である
建設大国日本の伝統を受け継いでいる建設現場である
日本の文化と言っても過言ではない『匠』が働くところである
教科書には載っていない技術を目から目へ手から手へ受け継いでいるところである
もう、ひと昔前だが、こんなことがあった
社会人になったばかりのあもんは一人の匠と仲良くなった
その匠の顔はまるで般若のようで、しかし愛嬌のある般若のようで
顔に似合わず、下っ端のようで‥
『監督さん! ジュース買ってきて! 一緒にあそこでさぼろうや!』
と話しかけてくれる匠だった
般若匠はあるとき言った
『昨日、ご飯食べに行ったら、隣に怖い人がおった! ぶち、こわかったんじゃけん』
あもんは答えた
『馬鹿じゃね~そんなところに行くけんよ』
般若匠は『アハハッ』と笑っていた
ある暑い夏の日
この日はめずらしく般若匠は汗を流していた
安全のために来ている白い長そでTシャツが見る見るうちに透けてくるまで汗をかいていた
働く匠を横目に歩くあもんはそこで立ち止まった‥
Tシャツから透けて見える背中には
本当の般若が描かれていた
『えっ!』とあもんは一瞬戸惑うが
『今日はよく頑張っとるじゃん』といつもどおり話しかけた
般若は少し照れながら笑った‥
こんな人たちもいた
『指を差して確認せんにゃいけんよ』とあもんが注意をする
『指がないけんの~』と匠が答える
『ここに名前と住所を書いてください』とあもんがお願いをする
『手が震えて字が書けんのんじゃけん 酒が切れたかの~』と匠が答える
鍛えられた肉体を持つ匠が言った
『は~い ジュース買ってきました♪』なぜだか内股小走り
『監督さん!あいつに感情で物事を言ったらいけんよ 切れたらぶち怖いけんね』
と、ある匠が忠告した
匠の世界は日本のよき上下社会が成立している
よってこの世界で生き残るのは
若くして上下関係を勉強していた「やんちゃ君」が多い
若くして礼儀規律と根性を教わったやんちゃ君は実に頼もしい
なぜなら『仕事に誇りを持っているから』
誇りがある分納得いかないときには妥協せず
己の信じた道を歩いている
よって、時折、罵声が轟く
皆をまとめるリーダーは
まとめるために信念を掲げ自分の納得できる証しを残し
そして、儲ける
罵声という雄叫びは一生懸命だということの顕れであり
古来、『匠』で受け継がれてきた宝物である
時折その一生懸命さはあもん達にも伝えられる
どちらかと言うと短気であるあもんは彼等の一生懸命に一生懸命答える
そんなとき
あもんも雄叫びをあげている
しかし人間は興奮状態になると人間の能力の半分も出せなくなってしまう
喧嘩はいつしか明後日の方向に向かってしまい
暴走し始めた人間は地雷を踏む
そう思ったのはあもんが三十路少年になり始めたころだった
誇りを掲げ声高々に主張する匠に
沈着冷静に進むべきベクトルを伝え
ひとつの結果に向かってもらう
あもん達は目の前が熱くなればなるほど冷静にならなければいけない
僕たち仲間がひとりでも地雷を踏んでしまわぬように‥
☆
『お前、歳とって、やわらかくなったの~』
そんな会話をよく耳にする
しかしやわらかくなったのは歳のせいではない
“怒るということで解決するということは何もなく
かえって自らのマイナスになりゴールのテープは切れなくなる”
ということに気付くからだ
なんてかっこいいことを語ったが
あもんもただの人間である
そんなに理想どおりにコントロールできるものではない
そんな時にはあもんは音楽を聴く
プンプンイライラを鎮めるのはやっぱり音楽である
あもんにとって即効性があるのはこの曲である
たま 『さよなら人類』
もしくは
カブキロックス 『OEDO』
音楽は人類を救う