あもん史 第十章 羞恥 | あもん ザ・ワールド

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「先生~ あもん君の顔が赤くなっています~」


あもんが小学校の時、発表をしていると誰かがこう言った
そう あもんは『赤面症』なのだ




いつからこうなったか分からない
恥ずかしいと思えば思うほど緊張しそれが顔に出てしまう
だけど『赤面症』は病気ではない
恥ずかしいから恥ずかしいんだと体が反応する症状
この頃は何が恥ずかしいか分からなかったが
今振り返ればその原因が分かったような気がする





応援団は人の前に立って声を出す
何百人の前でエールを切る
自然、何百人の目が応援団を見つめる



『そんなこと僕にはできるのだろうか』
『顔が真っ赤にならないのだろうか』
誰かに『先生 応援団が赤面しています~』と報告されないのだろうか




居心地の良さから入団した応援団
人前で「演技」なるものをしなければいけない
人に見せられるほどの「演技」なるものをしなければいけない
人に思わず拍手させる「演技」なるものをしなければいけない




あもんの応援団デビューの日



学校行事の一つとして行われる「壮行式」
各クラブが夏の大会に臨む前の「がんばれよ会」だ
海田高校では全校生徒が集まって行われる
そこで披露される応援団の演舞
そしてここが新人応援団員のお披露目ともなる


『赤面』にならないのだろうか
緊張して歩くときに手と足が同じ方向で歩いてしまわないのだろうか





新人団員はもちろん
未熟のためこの場でリーダーになって演舞をすることはできない
お立ち台に立つリーダーの後ろで「バック」と呼ばれる拍手と声を出すポジションのみだ
そこまで緊張しても誰も僕なんか見てやしない
だけど緊張はするのである
人生の中で初めて人の前で大声を出すのであるから









海田高校の体育祭は盛大である
それぞれのクラスが赤青黄白の4組に分けられ戦いを繰り広げる
体育祭の応援団は全クラスからそれぞれ男子4人が選ばれ
女子は全員参加でダンスを披露する
そこでリーダーシップを取るのが我々応援団の仕事
各組の団長となり一般生徒に応援演技を指導し応援団を創り上げる
意外とこの応援団は人気である
この応援団があるからこそ海田高校の体育祭は参加率が高い




この体育祭の中で応援団にとって一番白熱するのがやはり「応援合戦」
各組が決められた時間の中で演舞を披露する
この応援合戦にも各競技と同じく得点が与えられるからまた燃える
まず女子全員のダンスが披露され
そのあと太鼓が響き応援団が入場する



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体育祭応援団はおよそ2週間前に結成される
それから昼休憩や放課後にみんなで集まり練習をする
声の出し方、拍手の仕方
もちろん指導は我々応援団員だ
下校時間になると定時制の授業が始まるため練習ができない
そのため応援団は近くの公園に集まる
夜練の開始だ
そしてこの夜練で練習されるのは
















『ギャグ』の練習である










応援合戦
凛とした応援団が汗とつばを飛ばせながら大声を出す
普段だらしない生徒も普段教室の片隅にいそうな生徒も
この時だけはヒーロとなれる
そして「かっこいい応援団」が終了した後
団長が大声でこう言う











『ギャグいくで~』
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学ランを脱ぎ捨てた応援団は
2つの胸を切りぬいたTシャツに黒タイツ
爽快な音楽に踊る応援団
場内に笑いがこだまし
そこには「恥じらい」ということばは存在しない
全ては勝利のために
想いは応援団が全校生徒に伝えていく

















『赤面症』という羞恥の表れは
『自信』という脳内改革が行われた時
消滅するものである

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あもんはこのときから
『俺は応援団なんだ』と思うようになった













だって、鷲尾いさ子だってがんばっているんだ
とも思った