2年前の記憶である
そう、あの日も小雪がちらつく寒い日だった
職場への一枚のFAX
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『事故速報』
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多くの偶然がひとつのブラックホールに吸い込まれ
ひとつの必然となってしまったとき
事故は起きるものである
あもんの職場はそんな多くの偶然が蔓延している危険な場所である
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2年前のあの日
僕たちが聞いた速報は
同僚の事故であった
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数えきれないほどの人間が存在するこの地球という星の中で
一生のうちに出会える人というのはほんの一握りであっても
小さな絆を育くみ幸を味わう
宇宙に漂えば輝きを確認できないほどの小さな光かもしれない
しかし小さな光はやがて流星と成長し
誰もがうらやむ銀河となる
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2年前のあの日の二日後
尊き命がひとつ
消えた
悔しさと切なさと寂しさで
嘆き苦しみ涙した‥
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死神よ
もしもお前が実存するのであるならば
僕は真っ向から体当たりをするよ
残された命が残されなかった命を追悼するには
この戦いしかないからね
お前に「生き抜く意志」を伝えなければいけないからね
そして隣にいる人を「生かせる意志」も伝えなければいけないからね
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あの日の二日後から2年たった 今
僕は決意したんだ
彼の残したメッセージを貫き通すことを決意したんだ
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『人間は生きなければいけない』
『人間は生かさなければいけない』
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自ら生き抜き
そして
他を生かす
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それは人間が一生涯かけて与えられている使命
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死神よ
お前の活躍する舞台は人間界には存在はしない
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不慮の風
握りつぶしてやりたい言葉
訃
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数え切れないほどの偶然が
重なり合わさり必然となってしまった時
不慮の風が吹き込んで
ひとつの灯が消えてしまうことがある
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こうなってしまっては
もう 死神に戦いを挑むしかない
人間が死神に打ち勝つためには
今 この時を 精一杯 生きる
そして
隣にいる人を 精一杯 生かす
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人を殺めようとしているバカヤローども
命という言葉を百万回唱えろ
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☆
僕は今
彼がいなくなったこの地で事に仕えている
彼が成し得ることのできなかった愉悦を
彼と一緒に味わうために情熱を注いで事に仕えている
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そして、もうひとつ
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14年前のこの頃
島国に大きな不慮の風が吹き暴れた
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あの時、僕は
ただ傍観者になることに徹していた
なぜなら
僕は死神と戦う術を持っていなかったから‥
死神がとっても怖かったから
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でも
今は違う
死神に勝てることばを持っている
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『己を見つめ 他を敬い 共に歩む』
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だから僕は勝つよ
死神に勝つよ
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だからみんなも戦っておくれ
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人間は
きっと
もっと
強いんだ