3333段 | あもん ザ・ワールド

あもん ザ・ワールド

君へと届け 元気玉

日本一

なんて魅力的なことばなのだろう

たとえ欲の無い人でもこの称号を与えられたら

誰もがうれしい筈である

日本で一番になるということは

たとえ、叶わなくても目指すことは誰にでも出来る

そう常日頃考えていた青年あもんは

「日本一」ということばに敏感に反応していた

日本一を目指して旅をしていたと言っても過言ではないだろう

「端」と「日本一」を目指していたあの頃は

予想できない未来に不安を持ちつつ

無謀ということばを蹴飛ばしながら

何かに挑戦していたのかもしれない

夢とは何?と深く考えもせず

惹きつけられるところに進んでいた青年あもん

それはそれで、かっこよかったと恥ずかしながら自負をする

 

3333段ある日本一の石段は

 

 

熊本県泉村釈迦院にあった

釈迦院は日本三高野のひとつで1200年の歴史を持つ

ここの石段は昭和34年に着工し昭和63年に完成している

29年の歳月を費やしようやく日本一の称号を手に入れたのである

この石段には国内の石ばかりではなく、全国の石も使われている

参道に表記されているから面白い

 

登山で脚力に自信があった青年あもんは

意気揚々と登山開始

しかし、意気消沈はすぐに訪れる

恐さを知らない恐さを実感し

ひとりの無力さを学び

日本一の偉大さをかみ締めた

日本一のその先にあるものに気づいたとき

青年あもんはちょっとだけ身長が伸びていた

☆ 

『島国からの贈物』

『3333段』

1994158熊本県泉村にて

日本一の石段 3333段

日本一という言葉にひかれ 

ここまでやってきた

ただ日本一を確かめたくて

 

0~1000段

日本一に登っていることがうれしくどんどん登る

ペース配分なんか考えず前ばかりをみてどんどん登る

それがすごく楽しかった 

それでよかった

でも1000段目 

ハアハア言っていて汗びっしょりになっていた

休憩して初めてしんどいと気づいた 

十分無理していた

 

1000~2000段

ペース配分しなきゃとゆっくり登る

でもすぐ飽きてしまいペースが崩れる

水を飲んでは汗が出る 

苦しいばかり

そして永遠に続く石段 

同じ動きに耐えられない

途中吐きそうになる 

遠い遠い2000段目だった

 

2000~3000段

今度はふと上を向いて歩いてみた

するとどうだおどろいた

周りにはこんなにすばらしい木々が

虫たちの強い強い応援が

あれほどいやだった日差しも気持ちよく感じる

ペースはすごく遅くなっている

手摺なんか使うかと思っていたのが今はどうでもいい

すれ違う人と笑顔で挨拶をし

小学生と抜きつ抜かれつを楽しんでいる

なんとまあいい気持ちだ 

近い近い3000段だ

 

3000~3333段

もう頭がボーとしていて 

まっすぐ歩いていない

それでももう見えている3333段に急いだ

そこに何があるか知りたくて

 

そして 3333段

そこには何もなかった

ただあったのはきれいな景色と気持ちのいい風だけ

日本一という言葉の先にはただの景色と風だけ

だけどそれでもいい 

それだけでも…

 

だから帰りはただ降りただけ

降りてみるとそこには

ガタガタ震える足と

しぼれるほどのTシャツだけが残っていた