16年前、大阪から出て来て勤めた雑貨屋さんで、私は造花売り場の担当を任命されました。
当時、お若くして店長になられた方に「あんじさん。お花好きですか?」と尋ねられ「はい」とお答えしてしまった事が事の始まりです。
ゆうに500坪は有るかと言う店舗に、パートさんの絶対数が足りなかったのだろうと思いますが、
「ものを売るお店」とは思えぬ汚さ💦私は「えらい所に勤めてしまった💦」と思いましたが、
おそらく、遠くからいらして間もない店長もそう思われていたのだろうと後々思いました。
当時のそのお店の売上は、前年度の60%にも満たない、売上が段々下がるお店でした。
でもそのお若い店長がその年の年末の朝礼で「僕が来たからには、来年このお店の売り上げ率を120%にします。それには皆さんにして貰う事があります。それは掃除です」とおっしゃったのです。
私は当たり前にそう思ったのですが、他の方々は大学を卒業して間も無く店長となった方の言う事など、あまり信じていませんでした。でも私は絶対的にその言葉を信じたのです。なぜなら汚部屋、ゴミ屋敷育ちの私が一番「汚らしい所に金運はありえない」と知っていたからです。
500坪の店舗に掃除機が1台💦なんてケチなんだと思い、私は家から使わない掃除機を持って行って任された売り場の掃除から始めました。
ホコリだらけ😱ガラス棚は、すりガラスの様に手垢やホコリで曇っています。
商品は色があせていたり、長く売れないものは、埃が積もっている。ジャンルやカテゴリーがグルーピングされておらず、あちこちに散らばっていて、いざお客様が買おうにも何がどこにあるかわからない。あまりにも汚い為、あろうことかお客様が売り場にゴミをポイと捨てる有様です。聞けば長く担当者がおらず、放置されていた売り場のようでした。皆さんいっぱいいっぱいの担当場所をお持ちで手が回らなく「あんじゅさん、来たばかりで酷い売り場を任されたね」と心配を下さったくらいです。
私はまず、売り物とは思えない品物を一旦引いて、什器のホコリを取り、ガラスを磨き、グルーピングを徹底したのです。一日中ゼイゼイ言ってました。皆さんはおそらく「この人いつ辞めるか?」と思っていたと思います(笑)
でも私はこのお店で初めて出会った店長に雇って頂けた恩がありましたので、彼が来年の売り上げを120%にするとおっしゃった事の実現をこの目で見ようと思い頑張ったのです。
ある日、バックルームから汚いダンボールに入った一輪挿しが山ほど出て来たのです。恐らく300個はありました。皆さんが「これは民芸担当者か?造花担当者か?」と迷っていると店長が「あんじゅさんの売り場で売って」の一言で、300個のガラクタが私の売り場に来る事になりました。
私は恐る恐る箱をあけるとげっ😱想像を超えるガラクタの山また山(笑)ため息が出ました。
それも色違いで同じような花瓶ばかりなんです。
ホコリが付き、白くすすけたこの花瓶💦どうすりゃいいんだろう?💦ところが、一つ綺麗に水洗いして見ると、なんとも綺麗な一輪挿し。見ると赤や青、緑と同じ形で違う色があるではありませんか。私はこの花瓶を洗剤で洗い、一つ一つ拭いて乾かし、ピカピカに磨いたガラスの什器に、色の違いをグラデーションして並べました。
私はポップライターですので、「ギヤマンの輝きに一輪の花」だったか?可愛いポップを作成して陳列しました。すると粋な都会の雑貨屋さんに見えるではありませんか?2日後、朝売り場に行くと「あれ?」一輪挿しの棚がガラガラなんです。
私は店長が品物をバックルームに下げてしまわれたか?と思いましたが、とんでもない事が起きていたのです。バックルームに埃にまみれ埋れていた汚いガラクタ花瓶は、陳列棚から無くなる程、売れていたのです。結局300個はあった花瓶は、全て完売し、新しいものを発注する事となったのです。
やがて店長の考えで、店頭のメイン通路の前面を造花売り場にする事になりました。
皆さんは「あんじゅさん、来たばかりで店頭のメイン売り場担当なんて無理じゃない?可愛そうに。無茶振りするね。店長」と心配をして下さいました。
なぜ、店長は花売り場を店頭に移動しようとなさったのか?それは広島の本社から、こぞってお偉いさんが、店舗の視察にお見えになるからです。
他店との差を如何に全面に出すか?もしかすると、店長の賭けだったのかも知れません。
ある日、店長は私を呼ばれて「あんじゅさん、広島から部長、地区長などが、このお店にこぞってこられます。花売り場ちゃんとしてね。あんじゅさん、桜の時期ですね。この造花の桜が木に生えているようなディスプレイだったら綺麗ですね」とおっしゃったのです。「桜が木に?😱店長は私にやれと言ってるな?」と思いました。
私は家の裏山から山桜の木が伐採されていたのを思い出し手頃な桜の木があるかを探すと、2メートル程の幹に枝が手ごろに出ている木がありました。「でか💦」自転車では運べない。仕方ない。道ゆく人の迷惑にならないように、朝の早くから2メートルの桜の木を担ぎお店に運び込んだのです。広島から偉いさんが来るまでに後数日。
棚から、なにから掃除して、ピカピカの花瓶を並べ、桜以外のほとんどの花を後ろに引っ込め、担いで来た桜の幹に1000本程発注しておいた桜の造花の一部を結束バンドで引っ付けて、満開にしました。残りはメイン通路の左右にもりもりに飾り付け見事な桜街道で本社の方を迎える準備ができました。いざ当日、確か私は公休でいませんでしたが、翌日の朝礼で店長が「本社の方が凄いねー。花見だねとバチバチ写真を撮って帰ったよ」と知らせてくださったのを記憶しています。
店長の思想が高いと、その部下の思想もおのずとあがるのです。お店はスタッフ一同が努力を重ね見違えるほど綺麗になりました。それに伴い売り上げはうなぎ上りです。
更にお店では不思議な事が起こり始めました。
採用したスタッフがすぐ辞めると評判のお店でしたが、店長が採用されたスタッフは、殆どの方が辞めずに頑張って下さり、やがて地区でのモデル店になり、あちこちのお店から新人スタッフさんが研修にお見えになるまでの店舗にのし上がったのです。
やがて私が勤めてから一年が過ぎ、店長がおっしゃった年末の売り上げ率を言う朝礼がやってきました。一年前に店長が朝礼で言った事を覚えているスタッフは居なかったようですが、私はその日をワクワクして待っていたのです。今か今かと朝礼当番が売り上げ率を言うのを待ちました。そしていざその時がきました。「売り上げ率を発表します。売り上げ率120%」
私は素晴らしいと思いました。

それから数年間、店長がお辞めになるまで、
お店の売り上げは下がる事はありませんでした。
私も約9年、その店舗で楽しく働く事ができ、たくさん学ぶ事が出来たと感謝しています。
当日23歳だった店長が、売り上げを上げる為にスタッフに指示された事は「掃除をして下さい」その言葉ただ一言だった。
でもその言葉は、目を見張るほどの売り上げに繋がった事は間違いが無いのだと思うのです。