そんなある日、彼女から鼻歌が消えました。

ラシマルも、彼女に近づこうとはしません。

ボクは、彼女がいつもと違うことに気づきました。

「そろそろ荒れそうな雰囲気だなぁ」

「…………?」

ラシマルはそっと教えてくれました。

「ヒトは何かあると、ああなるんだ。今から大変だぞ」

ボクには、理解ができませんでした。

ラシマルは、いつもいろいろ教えてくれました。

ボクの知らない世界を、テレビを見ながら教えてくれたのです。

ラシマルと彼女の生活が、こんなに楽しいとは思いませんでした。

いつも、師匠とテレビだけの世界でした。

ほかの人形とも話ができないで、ずっと寂しい思いをしてきました。

そんなボクに、こんな素敵な時間が来るとは……。

ボクは、本来彼女を癒すためにいるのに、ボクが癒されていたのです。

ボクは、どのように頑張っても、音が出ません。

非常に残念です。

でも、ボクは今、彼女が幸せそうにしているのを眺めているだけで、嬉しいのです。

ボクは、ヒトのような表情はできません。

大声を出して喜ぶこともできません。

でも、胸の中がすごく温かく、嬉しく感じてます。

特別なことはしていませんが、この時間が続いてくれることを願っています。