あれからボクは、ラシマルと一緒にいることが多くなりました。

散歩のとき、一緒に連れて行ってくれるようになったのです。

彼女がラシマルに声をかけると、いつもボクを咥えていくのです。

そうすると、彼女は少し苦笑いをしながら、一緒に外に連れて行ってくれます。

この世界がこんなに広いとは、まったく知りませんでした。

ボクは、心からラシマルと彼女に逢えてよかったと思います。

あれから、しばらく彼女は荒れていました。

ボクの身体から、少しずつ糸がほつれ始め、綿が出てきはじめました。

腕も、少し、取れ始めてきました。

それでも、ボクは我慢していました。

そして、冷静になっていく彼女は、どんどんボクのことを気にしなくなりました。

 

ボクは、少し、ホッとしました。

ラシマルも、ずっと慰めてくれていたので、ボクは安心できたのだと思います。

ラシマルが警告を出してから、数日後でした。

ある日、彼女が大きな足音を立てて帰ってきました。

目には大きな涙を浮かべ、口を大きく曲げ、歯を食いしばっていました。

ボクは、今まで見たことのない顔でした。

彼女は、何も言わずにボクを鷲掴みにして、大声で叫びました。

「なんなんだよ!! あいつは」

そういって、ボクを投げつけました。

そして、何度もボクを踏みつけ、そしてまた壁に投げつけました。

そのたびに、ボクは悲しくなりました。

その感情は、投げつけられていることではありません。

彼女の苦しみが、ボクに伝わってくるからです。

この苦しみを癒して、笑顔にするボクの任務は、難しくて何もできません。

ボクには無理です。