「おー、『馬子にも衣装』だな。あれ?お前、また背伸びた?」
「相変わらず一言多いな!『馬子にも衣装』なんて俺が一番わかってるわ!てかこれ、派手じゃね?」
背中越しに鏡を覗いてきた松本さんを振り返る。
「いいだろ、ウチの新作!ちなみに雅紀にはコレな」
「だから、派手なんだって!」
「お前が結婚式に行くスーツなんか持ってないとかなんだとかボヤいてたから、俺が見繕ってやってんだろ?」
「いや、そりゃ、そう言ったけどさ……」
完全に言う相手を間違えた。
いや、相葉さんや二宮さんに言ったところで、ここに連れてこられるって結果は同じなんだろうけど。
「遅くなってごめん!って、ぅわ……」
社長室のドアが開いて、顔を出した相葉さんが目を丸くして立ち止まる。
「櫻井くん……なんか……アイドルみたいだね」
「……え……」
それって褒めてんの?って突っ込もうと思ったのに、そういった後に相葉さんが恥ずかしそうに笑うから……
「えっと……あり、がと……」
どこを見たらいいのかわかんなくて、足元に視線を落とした。
「はいはいはい。二人の世界に入んのは後にして。雅紀はこれ、着てみて」
「えぇ?これ?派手じゃない?」
「絶対似合うから」
それこそアイドルかよってくらいのウィンクをバッチリ決めて、松本さんが相葉さんにスーツを渡して試着室に押し込んでから、俺を振り返る。
「相変わらずだな、お前ら。やる事ちゃんとやってんの?」
「は?」
「まさか、付き合い始めて半年経つのに、まだチェリーくんなわけ?」
松本さんが俺に顔を近づけてニヤリと笑うから、思わず手でその顔面を押さえて突き放した。
「うるせぇよ、エロじじい!スケベが伝染るから近寄るんじゃねぇ!」
「お前、顔はやめろ、顔は!っていうか、スケベが伝染るってなんなんだよ!」
そう言いながら松本さんが想像通りだわって呟いて、ひとりで笑っているのを半ば睨むように見つめていたら、試着室のカーテンが開いて相葉さんが出てきた。
「潤……これで櫻井くんと並んでたらさ、目立ち過ぎない?」
頭ちっちゃくて、手足は細くて長くて、それこそそこら辺のアイドルやらモデルなんて、目じゃないくらいに美人でかっこいい。
「おー、似合う似合う。雅紀は何着ても様になるな。
とりあえず、写真だけ撮らしてよ。ちょうど今日、智がシフトに入ってるからさ」
ちょっと待ってて、と片手を上げて松本さんがインカムの呼び出しボタンを押した。
「……相葉さん、やっぱカッコイイな。てか、相葉さんこそ、アイドルみたいじゃん」
「アイドルって……もう24だよ?」
相葉さんに近づいてそう言えば、困ったように笑う。
「年齢なんて関係ないだろ。かっこいいって言ってんだから素直に喜べよ」
「……うん、ありがと」
「うん。素直でよろしい」
こうやって毎日、少しずつ距離が縮んでいって、よく笑うようになってくれた相葉さんがいてくれるだけで、俺は本当に幸せで。
いやそりゃ、あんな事やこんな事もしてみたいって思ってはいるけれど。
「櫻井くん?どうしたの?」
「え?」
「なんかひとりで真面目な顔したり、にやけたりしてるけど」
つんつんと俺の頬を突っついて、相葉さんが柔らかく笑う。
もうすぐ出逢ってから1年になるのに、いろんな表情を見る度に『好きだ』って気持ちがでっかくなっていくのはどうしてなんだろう。
「やっぱ、俺の恋人は最高だなって思ってただけ」
「えっと……ありがとう……?」
首を少し傾げて恥ずかしそうに笑うその笑顔に、俺の心臓は破れんじゃないかってくらいでっかい音を立てた。