「ねぇ、しょーちゃんは、どんな結婚式がしたい?」
「は?」
「俺はねぇ、ガーデンウェディングっていうの?外でやるのがいいな!風船とかいっぱい使ってさ!あー、でも海が見えるとこもいいなぁ。あ、でも、どうせやるならしょーちゃんのホテルがいいよね?!」
床の上に転がった雅紀が、キラキラした瞳で俺を見上げた。
その手には、確認したいことがあって持って帰ってきたウチのホテルのウェディングのパンフレットが乗っている。
「……つかぬ事をお伺いしますが……その結婚式というのは……?」
「俺としょーちゃんのに決まってるじゃん」
「……俺としょーちゃんのって……あのな……」
口を開いた俺に、ビシッと人差し指を立てて口を尖らせるから、そのまま何も言わずに口を閉じた。
そんなこと、言葉にする必要は無い。
雅紀だって本気で言っているわけじゃないだろうに、なんで否定するようなことを言おうとしたのかと、胸がチクリと痛む。
「ちょっと言ってみただけじゃん。そんなの無理って……わかってるよ、ちゃんと」
「……うん。そうだよな、ごめん」
ゆっくりと起き上がった雅紀が、膝を抱えて顎を膝に乗せた。
少ししょんぼりした雅紀を後ろからそっと抱きしめて、細い首筋に唇を寄せる。
「ちょ……ダメだって……明日、撮影っ……」
「……俺は、さ……2人がいいかな」
腕の中で雅紀がぴくりと肩を揺らした。
「え?」
「それか、5人」
「ふたり……か、ごにん?」
「そ、5人。俺とお前と、大野さんと二宮さんと……松本くんだけでさ……
どっか遠くの南の島とかで、さ……」
「……しょーちゃん……」
見かけよりもずっと逞しい雅紀の肩におでこを乗せた俺の髪の毛を、細い指が優しく撫でた。
「ごめんね、しょーちゃん」
「なんで雅紀が謝るんだよ」
「不貞腐れたりして、ごめん。ちゃんと全部、分かってる。
それで、しょーちゃんもそんなふうに思っててくれて、嬉しい。嬉しいけど……だから、ごめん」
もぞもぞと身体を動かして俺の腕の中から抜け出して、左側にぴったりとくっついて座り直した雅紀が、俺の肩に頭をのせた。
俺より少し高い体温が心地いい。
「俺との事、しょーちゃんはいつも色々と考えてくれてるのに、ひとりで勝手に怒ってごめん。
俺とずっと一緒にいてくれるって、俺もずっと一緒にいて欲しいって思ってるけど……だけどずっと隠してなきゃいけないんだもんね……」
「そんなの、謝ることじゃないだろ。お互いがそれをわかってて選んだんだから」
恋愛沙汰なんて許されない世界に生きているキミと、生きていくって決めたのは俺なのに。
この関係がバレたら、キミの大切な場所を奪ってしまうかもしれないのに。
それなのに『キミは俺のものだ』って言いたくなるのは、俺のエゴでしかないと思ってた。
「……そうだけど……でも、本当はしょーちゃんが好きって言いたい。
大野さんとかずくんみたいに、お揃いの指輪とか……」
そこまで言って『あ』って、慌てた様子で俺から離れて口を押さえた雅紀の手を掴む。
「えっと、あの……いいなぁって思ってるってだけで、欲しいとかそういうんじゃないからね?!」
耳まで真っ赤にしながら、早口でそう言い募る雅紀の手を強く引いて、また腕の中に閉じこめた。
「要らねぇんだ?」
「へ?」
「指輪とか、要らねぇんだ?」
「だって……ムリでしょ?」
「そっか、無理なんだ。残念」
「えぇ?!ちょっと待って!え?ムリじゃないの?ダメじゃない?」
「駄目なわけないだろ。今度、買いに行こう」
「え……嘘……ホントに?」
「嘘ついてどうすんだよ。まぁ、そんなもんなくてもお前は俺のもんだけど?」
「ええ?!ホントに?
え、やだ。なんで?
え?どうして?
え?しょーちゃん、ほんとに?
ねぇ、しょーちゃん、ほんとにいいの?」
「もう黙れって」
驚いてるんだか、喜んでるんだか、それとも泣きそうなんだか分からない顔で俺を見上げた雅紀の左手を持ち上げて、薬指にそっとキスを落とした。