「ちょっと!! 何ふたりして、そわそわそわそわしてんですか。落ち着かないから落ち着いてくださいよ」
さっきから、楽屋を出たり入ったり、出たり入ったり……かと思えば、肩を並べてこそこそ話して。
「だってさぁ、ニノちゃん。お誕生日だよ?!潤ちゃんのお誕生日にコンサートだよ?!」
でっかい方がワクワクした顔で振り向いて、ちっこい方がその言葉にふにゃんって笑いながらうんうんって頷いた。
「今日、潤ちゃん、泣いちゃうんじゃない?」
もうそろそろかなぁって呟いたふたりが、またドアを開けて外へ出る。
入れ替わりに入ってきた翔さんが、ふたりの背中を見送ってからちらりと俺を見て苦笑した。
「まだやってんの?あのふたり」
「ずーーーーっとやってますよ」
「泣くよな、絶対」
「泣くでしょうね」
「潤の誕生日なのにな」
「ね」
「もう、ここ数日、ホントにそればっかでさ、あいつ」
そう言いながら、翔さんの顔は幸せそうに笑っている。
青と緑のライトに埋め尽くされる景色は何度も見てきた。
別にそれがずるいとか、羨ましいとかそんなふうに思ったことは無いけれど、あのふたりはきっと、いつもそれを気にしてるんだ。
だから今日、当の本人以上にそわそわしてるのは仕方ないって分かってはいるけれど。
「見て見て見て見て!」
満面の笑顔で、スマホを掲げてドアを開けた相葉さんが、『あっ』て驚いた顔をしてキョロキョロと部屋の中を見渡した。
潤くんがいないのを確認して、『あっぶねー』って呟いた大野さんと顔を見合わせて、くふふふふって笑い合う。
「アナタたちさ、気をつけないと見つかっちゃうよ?ファンの子たち、色んなとこよく見てるんだから」
「だぁいじょぶだって!影からこっそりだもん」
「スタッフいっぱいだし、わかんねぇって」
「ねぇ、それよかさ!見てよ、これ!」
相葉さんのスマホの画面に表示されているのは、まだ明るいのに紫のライトに埋め尽くされた客席の写真。
「潤ちゃん、泣くかなぁ」
「泣くだろ、絶対」
『ねぇー』って言い合ってる天然コンビの瞳の方が、既にもう潤んじゃってるんですけど。
「にの?」
幸せそうにスマホの画面を覗いている相葉さんの横をすり抜けてドアに向かう。
「ちょっと、トイレ」
「いってらっしゃい」
ドアを閉めて、急いでスタッフの部屋に向かう途中で廊下の向こうから歩いてくる潤くんを見つけて、小走りになる。
「かず?」
俺を見つけて不思議そうに立ち止まった潤くんの腕を引っ張って歩いて、どこ行くんだよって声も無視して、ステージの袖の下に連れていく。
「なに?どうしたの?」
「……あ……」
驚いた潤くんの後ろに見慣れた人影を見つけて、『なんだよ~』って呟いた俺に潤くんが一歩近づいた。
「かず?」
「ふふ、みんな考えることは同じみたい」
後ろを指させば、潤くんが不思議そうな顔をして振り返る。
そこには、笑顔の大野さんと相葉さんと翔さん。
「ニノ、抜け駆けはナシだぞ」
「そうだよ!にのちゃんが何考えてるかなんて、お見通しだかんな!」
「っていうわけで、お邪魔してごめんな?」
「ふふ、うん。そうだね。やっぱ5人じゃないとね」
「てかさ、なんなの?そろそろ着替えないとさ……」
「……潤くん」
しぃって、人差し指を唇にあてて、そっとその背中を押す。
相葉さんと大野さんが暗幕を少し引いて、潤くんを振り返る。
「……なに……これ……」
「潤、誕生日おめでとう」
「松潤、おめでとう」
「潤ちゃん、おめでと!」
驚いた顔の潤くんに口々にそう言って、肩を叩いたりハグしたりして、3人が『お邪魔しました』って、俺の横を通り過ぎた。
その後ろ姿を見送って、身動ぎもせず前を向いている潤くんの横に立つ。
目の前に広がるのは、紫色の光の海。
きっと、潤くんはみんなの前では泣けないから。
最初から泣くのなんて、嫌だろうから。
伸ばした俺の手を、潤くんの手がぎゅって捕まえた。
「今日も最っ高のコンサートにしようね」
「……うん」
「潤くん、お誕生日おめでとう」
「……」
涙がこぼれないように上を向いた潤くんのほっぺたに、背伸びをしてちゅってキスをした。
おしまい♡