「お疲れーい」
「お疲れ様でーす」
かちんとジョッキを合わせて、冷えたビールを喉に流し込んだ。
「くぅー」
「くはぁー」
お互いをちらりと見合って、同時に吹き出す。
いつもキメキメな櫻井さんしか見たことないけど、うまーって笑う顔はいつもよりちょっと幼く見えて、ちょびっとだけ壁が低くなった気がしちゃう。
「友達のオススメで、適当に頼んじゃっていい?」
「あ、はい。お願いします」
テキパキと注文をすませちゃう櫻井さんは、やっぱりできる人なイメージなんだけど……
「うっわ、美味そ!」
届いた料理を前に目を輝かせている姿は『かわいい』としかいいようがなくて、それがまた『ギャップ萌え』とか言われてモテるんだろうなぁ……なんて考えながら、一気にビールが半分くらいに減ったジョッキから手を離した。
「ほら、遠慮しないで食えよ。っていうかさ、相葉くんと飲みって初めてじゃない?昼メシも一緒に行ったことないよね?」
「あぁ……はい……昼は俺、弁当なんで」
「え、弁当……?あぁ、ごめん。プライベートを詮索するつもりはないから……」
慌てた様子でそう付け加えた櫻井さんが、鶏肉を口の中に放り込んで『うんめっ』って言いながら俺の方へ皿を押してくるから、ぺこりと頭を下げてから俺も肉を口の中へ放り込む。
「うまっ!」
「いや、最高だなこれ」
そう言ってまたでっかいひと切れを口の中に入れた櫻井さんが幸せそうに笑う。
いやもう、本当になんなんだろ、この人。
めちゃくちゃかっこいいのに、めちゃくちゃ可愛いとか……オンとオフ、激しすぎじゃない?
「あの……弁当、母ちゃんに作ってもらってるとかじゃないっすよ?
彼女も2年くらい前に別れて、それからずっと募集中のまんまなんで、彼女の手作りでもありません」
「……え?」
余計なことまで言ってるなって思ったけど、何でかわかんないけど、櫻井さんに彼女の手作り弁当とかって誤解されてたら嫌だなって思ったんだ。
「自分で作ってるんです、弁当」
「すげ!……自分で?」
櫻井さんが目玉が落っこちちゃうんじゃないかってくらい目を見開いて俺を見る。
「じぃちゃんが趣味で畑やってて、たまに手伝い行くんですけど……じぃちゃんの畑仲間も沢山いて……だから、すんげぇたくさん野菜とか送られてくるんですよ。
それ、無駄にしちゃうの勿体無いっていうか、じぃちゃん達が大切に育てたやつだから、ちゃんと食べようって思って」
こんな話、聞かされても困るだろうなって思ったのに、櫻井さんは驚いた顔のままで俺の話を聞いていて、ぱちぱちと瞬きをしたあとで、『いや、まじですげぇわ』って笑ってくれた。
「料理のレシピのサイトとかいっぱいあって、簡単なのたくさん見つかるんですよ」
「それ見て作れんのがすげぇよなぁ」
「櫻井さんは料理しないんですか?」
「チャレンジしたことはあるんだけどさ……なかなかハードル高くてさ」
櫻井さんがそう言ってジョッキを持ったら、指輪が持ち手にあたってカツンと高い音を立てる。
きっと、すげぇ美人で料理も上手な奥さんがご飯を作ってくれてるんだろうな……なんて思ったら、なんだかちょっと腹が立って、ジョッキに残っていたビールを全部飲み干した。