「リンー!お待たせ!お散歩行くよー!」
今日は久々に5人で集まる日。
この間、おーちゃんに会ったのはいつだったっけ?なんて思いながら靴紐をぎゅっと結んだ。
メッセージは毎日、やり取りしてるけど、会えるとなるとまた話は別で……
どうしたってテンションが上がっちゃって、落ち着かない。
……けど
小さな川のほとりをリンとのんびり歩く。
いつから、なんだろう。
会うと楽しい、よりも切ない気持ちの方が増えてきたのは。
いつから、なんだろう。
あの人が、彼を見つめていることに気がついたのは。
小さくて、可愛らしくて、おれとは正反対の彼。
「わー、リン、見て見て!お魚、今日も沢山いるねー」
だけど、彼が好きなのは……
「いっそのこと、あのふたりがくっついちゃえば良いんだよね」
土手にしゃがみこんだおれの横にリンもちょこんと座って、心配そうにおれを見上げる。
「おーちゃんと、ニノちゃんが付き合っちゃえばさ……」
近くにあった石を拾って、川にぽちゃんと投げ入れる。
本当は、そんなの嫌だけど。
でも、おーちゃんが悲しむ姿は見たくないし。
それに、おれはずるいから。
『それでもいいよ』ってしょーちゃんが笑ってくれるから、その優しさに甘えてるんだ。
なのに、いつも……しょーちゃんの腕の中で想うのは、おーちゃんのこと。
小さいけど、いつもふにゃんとしてるけど、真ん中には誰にも負けない強さを持ってる男らしい人。
「おはよー」
「あ!おーちゃん、今日は早いじゃん!」
その姿に、やっぱりテンションが上がるのは隠しようがなくて。
「今日は早く目が覚めちゃったんだよ。おぉー、翔くんもう来てんのか」
「智くん、おはよ」
おーちゃんの声にドキドキして、しょーちゃんの声にもドキドキして。
かき集めた楽譜を胸にぎゅっと抱きしめた。
「あー、相葉ちゃん、明日ひま?」
「え?うん。暇だけど、なんで?」
「明日、真鯛釣りに行くからさ、釣れたら持ってくよ」
「ほんと?!超楽しみ!」
料理するのがおれと松潤くらいしかいないからって、それだけの理由でも、こうやって声をかけてもらえるのが嬉しくて。
「はよー。なに、大野さん。また釣り行くの?」
「おはよ、にの」
「真鯛、釣れたら持ってきてくれるんだって」
「へぇー、じゃあ、相葉さんに食べさせてもらお」
「にのも料理したらいいのに」
「めんどくさいもん」
にっこり笑うニノちゃんを見るおーちゃんの、優しい笑顔に胸がとくんってなって、ちくんって痛む。
「わぁ!ちょっと!リン!危ないよ!」
急に足元に走り寄ってきたリンに驚いて、よろけたおれをおーちゃんの手が支えてくれた。
「大丈夫?」
「う、うん……だいじょぶ」
慌てておーちゃんの腕の中から身体を離して、強ばる顔を必死に笑顔に変えた。
「あーあ、楽譜ぐっちゃぐちゃ」
「こら!リン!相葉ちゃんが怪我すんだろ!」
ニノちゃんの丸っこい可愛い手が、さっき、おれが放り投げて、ぐちゃぐちゃになった楽譜を床の上で丁寧に広げた。
ニノちゃんの前にしゃがみこんだおーちゃんが、リンを抱き上げて、2人で何か言ってから笑い合う。
ほら、あのふたりはお似合いなんだよ。
なのに、おれの心はチクチク痛むんだ。
「手伝うよ」
「ありがと、しょーちゃん」
背中にそっと触れたしょーちゃんのぬくもり。
腕に残ったおーちゃんのぬくもり。
どっちもなくしたくなくて、同じところから動けないでいるおれは……やっぱりずるいんだ。
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