「ショウ、どうした?」
バザルを出てから、ずっと黙り込んでいるショウをサトシが振り返る。
「え?あぁ、いや……」
唇を指で触りながら、ショウが視線を泳がせた。
サトシなら、なんて言うだろうか?
「狼だけが悪いの、かな……」
「違うだろうね」
「え?」
ショウの呟きに、間髪入れずに答えたサトシに驚いて、ショウは顔を上げた。
そんなショウに、聞いておいて驚くってなんだよ!と、サトシが苦笑する。
「狼だって、生きるために動物を襲うんだ。それが家畜だろうとなんだろうと、狼には関係ないだろ。森の中の茂みに隠れているウサギと、のんびりと柵の中で寝ている羊、俺が狼なら柵の中の羊を襲うね」
その方が簡単だもん、とサトシが笑う。
「そうか……そうだよな……」
「人間だって、狼にしてみたらご馳走なんだよ。丸腰だったら足も遅いし、格好の餌だよな。
人間が食物連鎖の頂点に立っているってのは、勘違いもいいとこだ。
知恵と道具を使えるから、何となく上にいるって思えるだけなんだよ」
サトシの言葉に、背筋を冷たい汗が伝うのを感じて、ベルトに刺した短剣をそっと撫でる。
「人間の生活を脅かすものが害獣、だろ。けど、獣たちは昔から、なんも変わっちゃいないんだよ」
サトシが森の方を見つめながら、ずっと見てきたことのように静かな声で言う。
それが『真実』なら……
排除されるべきは狼じゃなくて、人間じゃないのか?
急に喉が渇いた気がして、ショウはごくりと唾を飲み込んだ。
「どっちも命をつなぐため、身を守るために手を下すのは仕方ないよ。
赤ずきんだって、身を守るためにやったんだ。もし、何もしないまんまだったら、ショウはここにいないしね」
そう言いながら足を止めてしゃがみ込んだサトシの隣に、ショウもしゃがみ込んだ。
「こっちにいるね」
サトシの指が、シロツメクサの緑の葉の上に光る赤い小さな点を指さした。
蓬(よもぎ)の葉をちぎったサトシが立ち上がる。
「行こうか」
「え、行くって、どこに?!」
歩き出したサトシに、ショウも慌てて立ち上がった。
「会ってみたらいいんじゃない?」
「会うって……誰に?」
緑の葉の上に光る赤い点。
穏やかな風にのって微かににおう、獣のにおい。
そのにおいに心臓がどくりと音を立てて、足が止まる。
「どっちか、分かる?」
「え?」
「ショウなら、分かるだろ?」
狼の行方なんて、俺にわかるわけないだろって答えようとしたのに、サトシが真面目な顔でまっすぐ見つめてくるから、開いた口をそのまま閉じた。
どうして、なんだろう。
何故、サトシは『俺なら』分かる、なんて言ったんだろう。
……そして、どうして俺は……
「……こっちだ」
サトシの視線から逃げるように背を向けて、においのする方に歩き出した。
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