「……え……」
てっきり、どこかの店に行くもんだと思ってたのに、連れてこられたのはタワーマンションの入口で……驚いて横を向いた俺に、相葉くんが肩を竦めて笑う。
「この間、美味しいコーヒー豆貰ったんだよ」
エントランスを開けて、どうぞーって俺の背中を押す。
「いや、ちょっ……大丈夫?」
「だいじょぶ!」
はい乗って乗ってー!って、エレベーターの中に押し込まれて、くふふふふふふって笑った相葉くんが、最上階のボタンを押した。
ボタンに書かれた数字に驚いて、息を飲んだ。
「……高っ……」
「え?」
「……何でもない」
「くふふ、嬉しいな。家に人呼ぶって、すっごい久しぶり!」
ポーンって音がして扉が開く。
「うわ、すっげ……!」
「眺めは最高だよー」
眼下に広がる街並みが、キラキラとイルミネーションのように光る。綺麗だと思った瞬間に、自分が今、どこにいるのかを思い出して、背中がぞわっとした。
「高ぇ……」
「……もしかして、櫻井くん……高いとこキライ?」
「……ハイ……」
「そうなんだぁ」
にっこりと微笑んだ相葉くんが、僕の家こっちだからって俺の腕を引っ張った。
同じくらいの背の相葉くんの向こうに、夜景が広がる。
もしかして、と思う間もなく 相葉くんが鍵をあけてドアを開いた。
「どうぞー」
「お邪魔しまーす」
「洗面所、そっちね。適当に座ってて?」
コート、預かるねって相葉くんが俺のコートを持って隣の部屋に消えていく。
シンプルだけど、殺風景なわけじゃなくて、初めて来たのに何だか落ち着くのはなんでだろう。
唯一ごちゃっとしてるのは、テレビの前とテレビの横に置かれたオーディオセットの前だけ。
ディスクが数枚、乱雑に置かれていて、きっと昨日の夜とか、今日の朝とか、使ってたんだろうな、なんて思ってみたり……
って、詮索してるみたいな自分が急に恥ずかしくなる。
「あ!」
ふと、視線を移した先に見つけたものに声を上げる。
「え?」
キッチンから相葉くんが、どうしたの?って俺を見た。
「これ!この限定版!持ってんだ!」
数年前に解散したバンドの最後のアルバム。限定版はあっという間に売り切れて、手に入れられなかったやつ。
「あ、それ!櫻井くんも好き?!」
コーヒーのいいにおいと一緒に、相葉くんの嬉しそうな声が俺に届いた。