「幸せそうな顔、してんなぁ」
実家に帰ってから一ヶ月近く経った頃、しょーくんからの『結婚しましたハガキ』がポストに届いた。幸せそうなふたりの写真に、見ているこっちも顔が緩む。
『先日はお越しいただきありがとう!次回は宝箱探しな!』
書かれた文字に、ぷって吹き出して笑う。
この間、見つけられなくて、潤がすごく悔しそうにしてたっけ。
俺たちの秘密基地に埋めた宝箱。
子供の頃の宝物なんてたかが知れてるけど。
「何を入れたんだっけなぁ」
しょーくんにハガキが届いたよってメッセージを送ろうとしたら、タイミングよく かずからのメッセージが届いた。
『今月、来月で来れそうな日教えて。春には工事始まるって』
玄関のドアを開けて、壁にかかったカレンダーを指さして確認しながら返事を返した。
墨流しの体験をしたやつも、出来上がったって連絡があったし、今月か来月に行くなら送ってもらわずに受け取りに行けばいいだろう。
まだ、霧がかかったみたいに、もやもやしている俺の記憶。
またあの場所に行ったら、少しはスッキリするんだろうか。
ベランダに出て、洗濯物を取り込もうとして手を止める。
「お前、また来たの?」
少し離れた電線の上に止まる一羽のカラス。
そこがお気に入りの場所なのか、よく見かけるヤツ。
そもそも、俺にカラスの見分けがついているのかどうかもわからないけど、なんとなく、同じヤツだって思ってるだけかもしれないけど。
「かぁ」
首を傾げて、まるで返事をするように鳴く。
「んふふ。お前、かわいいな。あ、ちょっと待ってて」
慌てて部屋の中に戻ってスケッチブックと色鉛筆を手にベランダへ戻る。
『待ってて』って言った俺に応えるように、そいつはちゃんとそこに居た。
「カラスって、真っ黒じゃないんだな」
カラスなんてまじまじと見たことなかったけど、青緑や、紫に光る羽がすごく綺麗で。
『烏の濡れ羽色』って意味を改めて実感する。
「なぁ、お前とどっかで会ったことある?」
鉛筆を動かす俺をじーっと見つめているそいつと、前もこうして一緒にいたような気がして、そう尋ねてみたら
「かぁ」
首を傾げて小さく鳴いて、そいつはどこかへ飛んで行った。