「もう!それじゃお礼にならないじゃん!」
「先輩の顔を立てるってことを知らねぇのか」
「そういう時だけ年上感出さないでよ!」
女将さんの前でぎゃあぎゃあ言い合って、じゃあきっちり半分になさいって女将さんに笑われて、ふたりで財布から札を取り出して女将さんに渡した。
「あの、櫻井くん……」
「ん?」
「連絡先とかって、聞いてもいい?」
会計を待っている間に、相葉くんが俺の顔を覗き込むようにして聞いてきた。
「大丈夫なの?」
「え?何が?」
「いや……俺なんかと連絡取ったりして」
「『なんか』じゃないよ!櫻井くんだもん!」
「写真撮ってネットに流すかもよ?」
「櫻井くんはそんなことしないもん」
「酔ったフリして襲うかもよ?」
「やれるもんならやってみなよ。こう見えても結構鍛えてるよ?」
ふんって、ポーズをとる相葉くんと、ふたりで同時に吹き出して笑う。
「はい」
画面にQRコードを表示させて相葉くんに渡す。
「くふふ、ありがと。明日も明後日も、毎日連絡しちゃうかも」
「え」
「だって、僕。ストーカーだもん」
「マジかよ」
「マジだよ」
くふふふふって楽しそうに笑って、『さ、く、ら、い、し、ょ、う』って呟きながら細い長い指が俺の名前を入力していくのを眺めた。
すぐに俺のスマホが震える。
『夜露死苦』ってウサギがヤンキー座りしてるスタンプ。
「何これ」
「くふふ。『死語スタンプ』」
「だっせぇ」
「そこがいいでしょ?」
連打されてくる『死語スタンプ』とやらに笑い合っていたら、女将さんがお釣りを持って戻ってきた。
お釣りを受け取って、じゃあ帰ろうかって立ち上がった瞬間、相葉くんのカバンから大量の荷物が落っこちた。
「わー!チャック閉めんの忘れてたー!」
「うわ、すげぇな」
分厚いなにかの台本らしきものと、沢山書き込みがされたプリントの束。
「わー!見ないで見ないで!恥ずかしい!」
足元に落ちた紙を拾い上げて渡したら、相葉くんがひゃーーーーって紙の向こうに顔を隠した。