「じゃあ、敬語はナシ。櫻井さんもナシ」
「え?」
青になった信号に、アクセルをゆっくりと踏み込む。
「俺、堅苦しいの嫌いなんだ。仕事の時は別だけど」
「うん。さっきから、この間と全然イメージ違うなぁって思ってた」
「だからずっと笑ってたのか」
「くふふ、うん。
じゃあ、櫻井くん、どこ食べに行く?それとも、昼間から飲んじゃう?」
「相葉くんは帰りどうするの?どこか送って行った方がいいなら、飲まないよ」
長い綺麗な指を唇に当てて、うーーーんって首を捻る。
ひとつ下のオトコなのに、そんなポーズも様になるなんて、なんだか人生不公平だ。
「僕、櫻井くんと飲みたい。もっと仲良くなりたい……って、言ったら迷惑?」
首をかしげて俺を見るその瞳に、キュンってなるってこういうことか!って思えるくらいわかりやすく鼓動が跳ねた。
「や、ないない。そんなこと、ないよ。俺も相葉くんと、もっと話してみたいし」
「くふふ、やったー!じゃあ、飲み!昼間っから飲んじゃう!」
わーい!ってバンザイする姿に思わず頬が緩む。
「じゃあ、車置いてきてもいい?」
「あ、じゃあ、適当なところで降ろして?」
「え?」
「あ、えっと……」
「連れ込んで襲ったりしねぇよ」
にやりと笑いながら言えば、あっという間に顔が赤くなる。
「ち、違っっ!櫻井くんが嫌じゃないのかなって思って……」
「相葉くん、俺のストーカーするほど暇じゃないでしょ」
「すっ……!ストーカーなんてしないしっ!」
「でも、今日もすげータイミングだったよな」
もう二度と会うこともないだろうって思っていた人が、車を停めたタイミングで自分の車の後ろに滑り込むとか。
なんのドラマだよって感じだけど……
「ぼっ……僕だって、まさか櫻井さんがいるなんて思ってもみなかったから……」
「あ、櫻井さんって言った」
「もー!!!」
茶化した俺を睨みつけてから、ふいっと視線を逸らす。
「……けど、また会えて嬉しい」
「え?」
「また、会いたかったから……」
そう呟いて静かに笑う相葉くんに、さっきよりも大きく鼓動が跳ねて、掌に浮かんだ汗をジーパンで拭った。