「つっかれたぁ~!!」
玄関で靴をぽいぽいって脱いで、そのままベッドにダイブしたい気持ちを押さえて、エアコンのスイッチを入れた。
こんな暑いのに、毎日ネクタイにスーツだなんて、しょーちゃんってほんとにすごい。
「お風呂、お風呂!」
ジャケットを脱いで、ネクタイも解いて、バスルームに向かってお湯はりのボタンを押す。
「今日はどれにしようかなぁー」
何個か並んだボトルを指でなぞって、『さくら』のボトルで手を止めた。
「くふふ。今日は、しょーちゃんにしよ」
パラパラとお湯に落ちるピンクの粒。それを見ていたら、なんか泣きたくなって、慌ててリビングに戻った。
「しょーちゃん、ちゃんとご飯食べてるかな……」
俺も就職活動でバタバタしてて、しょーちゃんはしょーちゃんで、すんごい大きなプロジェクトの商談が大詰めなんだとか言って。
「しょーちゃんチャージしないと、干からびちゃいそう」
ため息をついて、冷蔵庫から作りおきのおかずとご飯を取り出して、レンジで温めた。
「いただきまーす」
目の前で美味しそうに食べてくれるしょーちゃんがいないとさ、ご飯なんてどうでもよくなっちゃう。
明日はちゃんと買い物して、それでご飯をたくさん作って、しょーちゃんの家に持っていこう。
しょーちゃんの家の鍵、持ってるけど、やっぱりしょーちゃんがいない時にしょーちゃんの家に行くのはドキドキしちゃって、冷蔵庫にご飯を突っ込んでダッシュで帰っちゃう。
だって、しょーちゃんの家はしょーちゃんの匂いがするものばっかりだから、1人だと余計に寂しくなるんだもん。
冷蔵庫の中身を見つけたしょーちゃんが、いつも慌てて電話をかけてきてくれて、慌てて会いに来てくれるから、俺、それだけで嬉しいんだよ。
明日は、会えるかな。
会って、ぎゅーってして、それから……
そっ……それから?!
「ごっ、ごちそうさまっっ!!お風呂、お風呂っっ!!って、いてっ!」
立ち上がった瞬間に、机の脚に足の小指をぶつけて、いたぁーーーい!ってひとりで蹲った。