「ほんっとに面白いな、お前」
「うっせぇ。近寄るな、エロじじい」
松本さんからなるべく距離を置いて歩く。
冗談だって分かってるけど、可能性はゼロじゃない。
「あ…」
目の前のマネキンに着せられたセーターに手を伸ばす。
相葉さんがこの間着てたのに、似てる。
「あ、それ。着心地いいよ。けど、お前はクルーネックじゃなくて、Vネックの方が似合いそうだな」
ほれって、棚から形の違うセーターを取って渡してくれる。
「わ、気持ちいい」
「だろ?」
嬉しそうに笑って、ちょっと待ってろって色んなところを回って色んなのを手に引っ掛けて松本さんが戻ってきた。
「お前に似合いそうなやつで、合わせやすそうなやつ持ってきたから、好きなの選べ」
「俺、こんな柄の着たことねぇ」
「とりあえず全部着てみろ。智も向こうで取っかえひっかえ着替えてんぞ」
『Office』って書かれたドアの向こう、でっかい鏡の前にド派手なシャツを着た智くんが立っていて、鏡越しに困った顔の智くんと目が合って笑う。
「翔くん遅いよ」
「智くん、すげー派手だね、それ。似合ってるけど」
「俺、やだって言ったのに、この人がさ…」
智くんに指をさされた生田さんが、ニコニコと笑う。
「だって、似合うのに冒険しないのはもったいないでしょ?」
はい、じゃあ次はこれ、行ってみよーう!って、またド派手な色のパンツとセーターを生田さんが智くんに渡して試着室のカーテンを閉めた。
「冒険、ね…」
呟いた俺に、松本さんがにやりと笑った。
「中身はそうそう変われるもんじゃないけどさ、自分を変えたいなら、ファッションを変えてみるってのが一番手っ取り早いんだよな」
「は?」
「お前、なんでその髪色にしたの?ピアスも」
「なんでって…かっこいいと思ったから、じゃね?」
「今までの自分から、なにか変わりたいって思ったからだろ?」
高校生になったノリと勢い、だったような気もするけど、確かに変わりたいと思っていたのかもしれない。『優等生』って周りから言われるような自分が、好きじゃなかった。
「そういう気持ちをさ、後押しできるんだよ、ファッションって」
そう話す松本さんの横顔は、オトナでかっこいい。
「だからお前も、ファッション変えたらチェリーくんから卒業できんじゃねぇ?」
「うっせぇ!エロじじい!」
こんなヤツを一瞬でもかっこいいと思った自分に腹が立つ。
松本さんが持っていた服の山を奪い取って、試着室のカーテンを勢いよく閉めた。