絵本の棚の前ででっかいため息をついた。
俺のドキドキはなんだったんだ!って思うくらい、何事も無かったように、いつも通り。
相葉さんにとっては、何でもないことだったのかもな……
そう思ったらまた、でっかいため息が零れる。
絵本をパラパラめくっても、全然頭に入ってこなくて、また ため息をこぼした時だった。
「何回ため息ついてんの?幸せが逃げちゃうよ?」
くふふって、後ろから聞こえた柔らかな声。
「…あいば…さん」
「あ、それね、面白いよ。この間の『おはなし会』で読んだら大ウケだった。あとはねー、このへんがオススメかな」
相葉さんが指さした棚の本を何冊か見ていたら、相葉さんがあのさって、ぼそりと呟いた。
「え?」
「本借りたら、公園で待ってて」
小さな声でそう言って、あっという間に部屋から出ていく背中を呆然と見送った。
聞き間違い、じゃないよな?
公園で待っててって言われたよな?
手に持っていた絵本を落としそうになって、慌てて持ち直してから階段をバタバタと下りてカウンターに向かう。
「あれー!久しぶりだね!」
「ども」
「相葉くんに会った?さっき、お昼に入っちゃったんだよねぇ…この間の『おはなし会』で、もうひとりの先生いないの?って子供たちがすごいうるさくて参ったって言ってたよ。またさ、時間があったらボランティアやってよね?」
にこにこと話す長野さんに『はい』って返事をしながら、考えてるのは相葉さんの事ばかりで……
昼休みなんだったら、公園で少し話せる?
まだ、謝れてないし。
「じゃあ、また」
長野さんに頭を下げて、急いで公園に向かう。
夏に相葉さんとおにぎりを食べた公園。
潤と3人で座ったベンチに座る。
相葉さんのことなんて、全然何も知らないけど。
あの時より、今の方がずっと分かんないことが多いけど。
でも、それでも…
相葉さんが気になるんだ。
また、会いたいって思うんだ。
俺を見て笑ってほしいって、そう思うんだ。
耳元でがさりと音がして、びっくりして顔を上げたら、コンビニのビニール袋を俺の耳の横に差し出した相葉さんが、くふふって笑う。
「一緒に食べよ?」
はいって渡された肉まんを、ありがとうございますって受け取った。