「僕は失礼して先にシャワーを浴びさせてもらうから、君はゆっくり寛いでいて」
連れてこられた部屋は、最上階のスイートルーム。
いつ手配したのか、部屋にはカクテルとシャンパンのボトル、フルーツの盛り合わせが届けられていた。
「シャワーから出てきたら、いないかもよ?」
「それなら、それでもいいよ」
するりと頬を撫でてから、バスルームに消える。
「最高だね」
鏡に映る自分に笑いかけて、豪華なソファに身を沈めた。
取り出したスマホに並ぶ、着信履歴にため息をついて、また震えだした画面をタップした。
「なんだよ」
『なんだよ、じゃねぇよ。どこにいるんだよ、今』
「は?」
『カズの店来たら、さっき出ていったって言うから……』
「今?ホテルのスイートルームだよ」
『え?』
「詮索するヤツは嫌いだって言ったよね?」
『おい……』
「もうかけてこないでね」
『まさ…』
画面をタップして、電源も落とした。
折角のいい気分が台無しじゃん。
潤はいい奴だけど、甘やかしすぎたかな。
電話番号は教えるべきじゃなかったのかも。
カクテルを飲み干して、シャンパンに手を伸ばそうとして、手を止めた。
「あー、やられた。結構強いな、これ…」
口当たりが良くて、甘くて飲みやすかったけど、飲み終わった瞬間にふわふわする。
「あれ、もう全部飲んじゃった?」
バスローブ姿で俺を見下ろす男を軽く睨む。
「これ、強いじゃん」
「そうだったかな?」
「……ずるい」
そう言った俺の手を持ち上げて、指先にキス。
「君、名前は?」
「聞いてどうすんの?」
「そうだな、聞いても仕方ない」
引き寄せられて、重なる唇。
ほらね
どんなに紳士だって、ハダカになればみんな同じ
オトコもオンナも
ハダカになればオスとメスだ
欲にまみれたオスとメス
誘う方が悪いのか
誘いに乗る方が悪いのか
ギブアンドテイクでしょ?
俺はただ、ぬくもりが欲しいだけ
彼は快楽が欲しいだけ
求められたら、差し出すだけ
「君は本当に魅力的だね」
耳元で囁かれる声に、そっと目を伏せた。