ポストに返却された本を整理していたら、ドアをくぐる櫻井くんが見えた。
カウンターをちらりと見てから、学習スペースに向かう。
もしかして、僕のこと探してる?
なんだか嬉しくなって声をかけたら、目が落っこちちゃいそうってこういう表情のことを言うんだなっていうくらいのびっくり顔で、櫻井くんが振り向いた。
「くふふ、びっくりしちゃった?ごめんごめん」
櫻井くんの肩を叩いて、カウンターに向かう。
「今日は、生徒手帳 持ってきた?」
「あ、は、はいっ……」
櫻井くんから渡された生徒手帳は、見慣れた生徒手帳。
「わ、櫻井くん、僕の後輩だ」
「え、マジですか?」
僕が卒業したのは4年前か。
まだ、あの強面の先生いるのかな…あと、アニメのキャラクターみたいな声の先生とか……名前、何だったかなぁ、思い出せないけど、いつか櫻井くんに聞いてみよう。
なんだか楽しくなって笑いそうになったから、慌てて立ち上がって、カウンターの奥から出来上がったカードを取り上げた。
「時間ある?」
「え?」
「本だけじゃなくて、色々使えるんだよ、図書館って。ガイダンス聞いてみない?」
櫻井くんは受験生で、勉強しにここに来てるってわかってるけど、なんとなくまだ話していたくて、そう聞いてみた。
「お兄さんがしてくれるんなら、聞く」
ちょっとふてくされたみたいな、嬉しそうな、そんな顔で櫻井くんが答える。
「くふふ。相葉だよ」
「え?」
「お兄さんじゃなくて、相葉。相葉雅紀です」
首から下げたネームプレートを櫻井くんが見やすいように持ち上げる。
櫻井くんの目が一文字一文字、字をたどっていく。
「あいば……さん」
「じゃ、まずは簡単に説明するね?」
櫻井くんに呼ばれた名前がくすぐったくて、綻ぶ口元を隠すように下を向いた。