「あれ、翔やん」
「おす」
「もしかして、空港から直行?」
「うん。報告書上げないといけなくてさ」
俺の言葉にうげぇーって変な声を上げて、しょーがない、そんな翔やんにこれあげるよって、手にしていたコーヒーショップの紙コップを俺のデスクに置いてから二宮が自分の席に座った。
「ゴミじゃねぇかよ」
「あれ、そうでした?」
ふざけんじゃねーって紙コップをゴミ箱に捨てて、にやにや笑う二宮を睨みつけて笑ってから、立ち上がったパソコンの画面に視線を戻した。
「ちょっと、出てくる」
頭が働かなくなってきて、増田にそう声をかけて立ち上がる。
下の階にあるコーヒーショップの一番苦いヤツが飲みてぇな、ってエレベーターホールでエレベーター待ちの間にスマホを取り出した。
『しょーちゃん、おかえり!今日はリクエスト通り肉じゃが作っておくね♡』
届いていた雅紀からのメッセージに、頬が緩む。
ニューヨークに行っている間に、東京もすっかり冬らしくなって、街の中はクリスマス一色になっていた。
「あと、1週間、か……」
スマホをまたポケットにしまって、ドアが開いたエレベーターに乗り込んだ。
「あ、注文してたやつ、取りに行かねぇと……」
報告書仕上げたら、店に寄ってから家に帰るか……
コーヒーショップの列に並びながら、またスマホを取り出した。
「なにニヤけてんの?」
「うぉお?!」
突然後ろから声をかけられて、スマホを落としそうになって慌てる。
「んだよ!二宮!ビックリするじゃねぇかよ」
「いやだって、コーヒー買いに来たらスマホ見てニヤけてるエロ親父がいたからさ、気になるじゃん?」
くくくって紙袋を持った手で口元を隠して笑う。
「誰がエロ親父だよ!」
「エロいサイトでも見てんのかと思って。あ、これ、翔やんの分」
紙袋の中から、紙コップを取り出して、はいって俺の手に渡すから、さんきゅって受け取って列から抜け出した。
「さっきはコーヒー空っぽでしたからね。で?何見てたのよ?」
「だから変なもん見てねぇって」
俺がスマホをポケットにしまうのを楽しそうに笑いながら二宮が見つめる。
「会社でかわいいコイビトの写真見て、にやけてたりとかする訳ないよね、翔やんが」
「か、かわいいコイビトって、なんだよ……」
「まだそんなこと言ってんの?」
「うるせぇよ」
「雪だるまと一緒に写真撮るなんて、可愛いと思いますけどね?」
「なっ……」
「ふふふ。お幸せにね。じゃ、お先に」
呆然とする俺の目の前でひらひらと手を振って、二宮はエレベーターの扉を閉めた。