「こら、雅紀」
「くふふ。しょーちゃん、あったかぁい」
「布団、もう1枚あんだろ」
「一緒がいいもん」
雅紀の部屋のベッドの上。
掛布団は2枚あったはずなのに、俺の布団に潜り込んでくる雅紀に慌てる。
「しょーちゃんと、一緒がいいの」
「布団、めくれて寒いんですけど」
雅紀に布団を引っ張られて、雅紀の反対側に隙間ができて、ひんやりした空気が入ってくる。
「あ……ごめんね?」
じゃあ、もっとくっついちゃお♡って、雅紀が俺の胸にぴったりとくっついた。
「ちょ……」
至近距離にある、雅紀の顔。
「……おれ、しょーちゃんと『なにか』あること、期待してるんだけど?」
そういった後にくふふふふって、楽しそうに笑う。
……笑えないっての。
マジで笑えねぇ。
「しょーちゃん?」
黙り込んだ俺を不安そうに見上げた雅紀を、むぎゅううううううって、力いっぱい抱きしめた。
「わ!ちょ!ギブギブギブ!痛いって!痛いって、しょーちゃん!」
雅紀が俺の背中をべちべち叩いて暴れる。
「寒いから、暴れんな」
低い声で言えば、ぴたりと動きを止める。
「……ごめんなさい」
「軽々しくそういうこと、言うな」
「……しょーちゃんにしか、言わないもん」
雅紀の手が、シャツの背中をぎゅって握る。
雅紀の鼓動の音が、直接、俺の胸に響いてくる。
そしたら、俺のも、聞こえてんだろ?
でも、ダメなんだ。
今は、まだ……ダメなんだ。
「来月……」
「来月?」
「大野さんとこ行った後、予定空けといて」
「あ、さとちゃんの…… あ!」
雅紀が、がばって起き上がった。
「わ!寒!」
「あ!ごめんっ」
慌ててまた布団の中に戻った雅紀が、あのさって、俺を見上げた。
「明日、スーツ買いに行くの一緒に行ってくれる?俺、ちゃんとした服って持ってないから……」
「いいよ。俺ん家行って車取ってから行こ」
「ありがと、しょーちゃん。じゃ、おやすみ」
「ん、おやすみ」
あっという間に聞こえてくる寝息。
「そんなんじゃ、『なんか』あることを期待されてても、なんもできねぇじゃん」
小声でそう呟いて、ひとりで笑う。
柔らかい髪の毛をそっと撫でて、俺も目を閉じた。