懐かしい制服に袖を通して、懐かしい景色を見ながらのんびり歩く。
坂道の途中に、見慣れた人影。
相変わらず、なふたりの姿に頬が緩む。
「まだネクタイやってもらってんのかよ」
気づかれないようにそっと近付いたら、手を握りあって歩き出すふたりに思わず声をかけた。
「なんだよもう、朝からイチャイチャしてんなぁー」
「「カズさん?!」」
仲良くハモって、同時に振り向いたふたり。
いやほんと、お似合いだわ。
「卒業式には出席しろって言われたから、さ…相変わらずだね、翔やんとまーくん」
「わざわざ一時帰国したんですか?」
「そうなの。御丁寧にチケットまで送り付けてきた人がいるから」
ふたりが顔を見合わせてから、坂道の上を見上げた。
そこにいるでしょ?
変わらない笑顔で立ってんでしょ?
「じゃ、お先に」
ふたりにひらひらと手を振って、坂道を上る。
本当は、走っていきたいくらいだけど。
本当は、抱きつきたいくらいだけど。
「お久しぶりです」
にっこりと微笑んで、見上げる。
「チケット、ありがとうございました」
「おぅ、元気そうだな」
ぽんって、優しく手を頭にのせて、ふにゃんって笑う。
「行こうか?校長先生が待ってるよ」
「はい」
懐かしい背中の少し後ろをゆっくりと歩く。
……ねぇ、大野さん。
今日が終わったら……
終わったら、さ……
「にの……」
前を向いたまま、大野さんが懐かしい呼び方で俺の名前を呼んだ。
「はい?」
「明日、ヒマか?」
「さぁ……どうでしょう?」
「そっか」
ちょっとまぁるくなった背中に手を伸ばして、止める。
これだから、オトナって嫌いだ。
「明日まで待ってる気なんて、さらさらないけど?」
前を歩く背中に、聞こえないように呟いた。