今日は土曜日。
いつもなら目覚ましはかけないで、のんびり寝てるのに。
今日は学校に行く日よりも早く目が覚めちゃった。
カーテンを開けて窓も開ける。
いい天気だから、さっさと洗濯しちゃおう。
それで、しょーちゃんの時計も仕上げちゃおう。
来てくれた時に渡したら、どんな顔で受け取ってくれるのかな。
引き出しを開けて、止まる。
今日は、デート、だよね?
何を着ていったらいいんだろう。
しょーちゃんは、迷彩、なのかな。
しょーちゃんの部屋のクローゼットを思い出してくふふって、笑う。
キレイめなデニムと、一番新しいTシャツを選んで、パジャマも洗濯機に放り込んだ。
「まさ、ちょっと」
作業場から顔を出したじぃちゃんに呼ばれて、作業場に入る。
「これ、着けてみろ」
渡されたのは、ずーっと昔に、大きくなったら俺に頂戴って、言っていたじぃちゃんの時計。
「え!じぃちゃん、これ…」
「本当は成人式にとか思ってたんだけどなぁ…」
一人前の弟子になったからな、って、じぃちゃんがベルトの調整をしてくれた。
「この間、修理に持ってきた子を見たらずいぶんと使ってなかったことを思い出してなぁ…」
じぃちゃんの視線の先には、しょーちゃんの時計が入ったケース。
じぃちゃんの時計より少し古いその時計はしっかりと今、動いてる。
「じぃちゃん、ありがとう。大切にするね!」
時計を外して、作業台の上にそっと置く。
ふたつ並んで時間を刻む、その姿に幸せだなって、思う。
「で?今日はあのイケメンくんとデートなのか?」
じゃあ、朝ごはん作ってくるねって、作業場を出ようとしたところで、そう言われて階段を踏み外して、盛大にコケた。
「いて!ちょ、ちょっと、じぃちゃん!何言ってんの?」
なんで知ってんの?
なんでわかるの?!俺、デートだなんて一言も言ってないよね?!
午後出かけるって話もまだこれからするとこなのに!
「昨日、山さんの店の前で、抱き合ってただろ?」
…み、見られてた…の?
「あ、あの…じぃちゃん…」
反対、するよね?
ダメだって、言うよね?
じぃちゃんの視線が痛い…
「世間一般的ではない事は確かだけどな」
俯いた俺の頭の上にじぃちゃんの声が降ってくる。
「でも、自分の幸せは自分で見つけるもんだ。どんな道を選ぶか、誰と歩くのか…
いろんなことを経験して、悔しくても、悲しくても…泣いて、怒って、それでもこれが自分の選んだ道だって胸を張って空を見上げて言えればいい」
びっくりして、顔を上げたら、じぃちゃんは優しく微笑んでくれて…
そんなじぃちゃんに、俺は思わず飛びついた。