「あれ?サク、今日そんなネクタイだった?」
もう1本コーヒーを買って近寄ってきた松本が、ネクタイを指さしながら言う。
「わ!すげぇカッコイイな!これ、どこの?」
「あ、これ…もらったんだよ」
「もらった?」
カシュって、片手でプルタブを開けて片方の眉毛だけ上げて松本が聞き返す。
「あー、うん。カフェで相葉くんに会ってさ…」
到着したエレベーターに乗り込む。
「相葉くんって、あの、海の家の?」
「あ、あぁ、そう。そんで、コレ、くれた。そのスーツだったらこっちの方が絶対いいって…」
なんか、服飾系の学校行ってて、自分で作ったんだって…っていう俺の言葉を、聞いてるのか聞いてないのか…松本はネクタイを凝視して、やっぱりなって、呟いた。
「相葉くん、オシャレだと思ってたんだよなー。モデルでもやってんのかと思ったけど、作る方かー。で?連絡先とか聞いた?サク」
「あ、いや…そんな余裕なくて…」
「マジで?!ネクタイ貰いっぱなし?!」
「いや、お礼はするつもり、だけど…」
マジかよ!信じらんねぇ!って、叫んだ松本を軽く睨む。
「海に行きゃ、会えるだろ」
…なんで、俺…嘘ついてんだ?
連絡先、聞いたし。
明日、メシの約束したし。
「服飾系って言ったよな?この辺のって言ったら、あそこしかねぇか…」
自分たちの部署のフロアについて、松本が空き缶をぽいってゴミ箱に投げ入れて、よし、任せろ!って、笑う。
任せろって、何を?
「相葉くん、探してやるよ」
綺麗にウインクを決めてデスクに戻る松本の背中に、なんで嘘ついたんだろって、ため息をついて自分のデスクに戻った。