ふわふわ、ふわふわ。
おーのさんの手が俺の頭を撫でる。
「いろいろ、あったよなぁー」
んふふって、笑って、また俺の頭を撫でてから、よいしょって、立ち上がる。
離れた手が恋しくて、おーのさんの背中を目で追う。
窓を開けてベランダに出たおーのさんが、俺を振り返って笑う。
「かず、おいで?」
その声と差し出された手に、吸い寄せられるように立ち上がる。
もう、ダメだよ。
もう、限界。
アンタのこと好きですって、言っちゃうかもしれない。
弱い俺を許してくれる?
おーのさんの手に向かって伸ばした指を、おーのさんの手が掴む。
その、小さな細い身体からは想像のできない強さで、俺の腕を引いて...気がつけば俺は、おーのさんの腕の中に、いた。
「ごめん、な...」
おーのさんが言う。
「なにが、です?」
声が震える。
恐る恐る見上げたおーのさんの後ろには、白く輝く、月。
「俺、ずっと知ってた。知ってたのに、知らないふり、してた」
「なに...を?」
おーのさんを押しのけようとして力を入れた腕は、いとも簡単におーのさんの手に払われる。
「お前、俺のこと好きだったろ?」
おーのさんが、笑う。
月の青白い光に照らされたその顔は、今まで見たことのない顔だった。