収録が終わって、みんなに挨拶して、さっさと楽屋を後にした。
無言のまま車に乗って、店の手前の人通りの少ない場所で、鈴ちゃんが車を路肩に停めた。
「じゃあ、後で迎えに来ます」
「いいって、タクシーで帰るから」
「ダメです」
「もー、鈴ちゃん!」
「待ってますから、電話してください。いいですね?」
「...わかった。ありがと」
「本当に、無茶しないでくださいよ」
「...うん...」
なんで皆、俺の心配ばっか...
俺は、大丈夫なのに。
俺の返事に、まだ少し心配そうな顔をしながらも、鈴ちゃんは車を発進させた。
時間は19時20分。
俺は大通りからひとつずれた小さな路地を進んだ。
さっき見たから、地図は頭の中に入ってる。
「ビンゴ!」
小さく呟いて、暗がりに停る車に近寄って窓をノックする。
中にいた人が驚いて振り返って、俺の顔を見て、また驚いて窓を開けた。
あー、こいつ、前にどっかで会ったな。
「誰、待ってんの?」
「相葉くんこそ、こんなところでどうしたの?」
気持ち悪い薄ら笑いを浮かべて答える、そいつ。
「俺はね?誰かが嘘の記事で俺らに迷惑かけようとしてるって聞いたから、ちょっと偵察に来ただけ」
にっこり笑って、しょーちゃんのカノジョの名前を告げたら、カメラマンの顔が少しこわばった。
「撮れって言われたの?」
「いや...ここで張ってれば、いい写真が撮れるって聞いただけだよ」
「ふぅーん、そうなんだ...で?どうすんの?」
「ヤラセだって何だって、こっちだって仕事だからな」
ふんって、カメラマンが鼻を鳴らした。
「じゃ、もっといいこと、教えてあげよっか?
俺ね、今日、あそこの店で旬な俳優さんとご飯なんだよね。
隠れスキャンダル女王のヤラセの記事なんかより面白いの、撮れるかもよ?」
カメラマンの目の色が変わったのを確認してから、じゃあねって、手を振って車を離れた。
店の前を通り過ぎて、くるっと遠回りしてまた、店に向かう。
みんな、単純。
笑えるくらい、単純。
それで...
嫌になるくらい、欲にまみれてる。
どんなに笑ったって
どんなに着飾ったって
中身は、同じようなもんでしょ?
星の見えない空を見上げる。
あの、空みたい。
みんな、真っ黒だ。
...ソレハ、オレモ...オナジ...?