宿題を教えてやった後で、居心地が悪かったから、ちょっと出てくるって、家を抜け出した。
妹の友達、とはいえ、中学から男子校の俺には、数人女のコが目の前にいるって、違和感でしかなくて。
家を出たって行くところもないんだけど...
久しぶりに智くんのとこに行こうかと思ったけど、電話が全然つながらないから諦めた。
まだ、学校かもしれないし、絵を描いてるかもしれないし。
当ても無くぷらぷら歩いていたら、自然と足がある方へ向かう。
『chronostasis』と書かれた看板の前。閉められたシャッターに少しガッカリする。
「定休日かぁー」
この店で扱われてるのは、少し古い機械時計。新しい時計も、クォーツも修理はするけど、古い機械式の時計が好きでねって、じぃさんの時計を持ってきた時に、店主のおじぃさんが笑ってた。
じぃさんの時計を大事そうに受取りながら、いい時計だから、ちゃんとメンテナンスしたらずっと使えますよって、嬉しそうに笑ってた。
修理、早く終わんねぇかな...
そういえば、一番弟子に修理させてもいいですかって、言ってたな。
若いけど、腕は確かで、誠心誠意対応する子だからって、力説するから、おかしくて。
お任せしますって、言ったら、本当に嬉しそうに笑ってた。
そういえば、店の名前の『chronostasis』って、どういう意味なんだろ?
近くのコンビニでコーラを買って、公園のベンチに座ってスマホを取り出した。
ギリシア語の「クロノス(時間)」と「スタシス(継続)」からなる言葉で、一番身近な例はアナログ時計を見た時に秒針が一瞬止まって見えること...
あぁ、確かにある。
一瞬、時計が止まってるって思う、アレか。
アレを表す言葉があったのか...
...面白いな...
脳の錯覚っていうか、仕組みのせいなのか...
...って、『脳』って単語で嫌なこと思い出した。
来月、進路指導があるんだった。
外部の大学に行く予定はないから、どの学部に進むかを決めないと...
でも、将来何になりたいか、なんて特に何もないんだよなぁ...
「どうすっかなぁ...」
空を見上げたら、頭の上を真っ直ぐに飛行機雲をひいて、飛行機が飛んでいった。