俺としょーちゃんのランドセルは、今、ロンドンのアパートのリビングの棚の上に2つ並べて置いてある。
あの日、思い出して見つけたのは、ランドセルの底に書いてあったメッセージ。
『しょーちゃん、いちばんだいすき!』
『まーくん、いちばんだいすきだよ!』
お互い書いたことも忘れてたし、使ってた時は底なんて見たこともなかったし...まさかしょーちゃんが、俺と同じことしてたとは思わなかった。
暗い色の中張りの上に黒いマジックで書かれたそれは、本当に良く見えなくて、2人で一緒に覗きこんで、あんま良く見えないなって、笑った。
母さんたちは、ランドセルが交換されたことも、ランドセルの底に書かれたメッセージにも、すぐ気がついたらしい、けど。
『もー、ホントにしょーちゃん、しょーちゃんって、ねぇ』
『雅紀が、雅紀が!って、うるさくて』
『まさか、結婚したいって、言い出すとはなぁ...』
『翔くんに愛想つかされないようにしっかりやれよー』
あの日は、夕飯中ずっと、父さんや母さんたちの俺たちの話が盛り上がって...しょーちゃんと2人、真っ赤になりながら、もぞもぞご飯を食べた。
せっかくの母さんたちの料理だったのに、全然味がわかんねぇって、しょーちゃんがボヤいてたのを思い出して、くふふって、笑う。
「なに、笑ってんの?」
後ろからしょーちゃんが俺を抱きしめて、言う。
「父さんたち、面白かったなーって」
「あぁ...さすが、俺たちの親、だよなぁ...」
あっさりOKもらえるなんて思ってなかったから、ビックリしたわって、しょーちゃんも笑う。
「改めて、これからもよろしくな?雅紀」
身体の向きを変えて、しょーちゃんとおでこをくっつけた。
「こちらこそ、よろしくね?しょーちゃん」
ふわり、優しくしょーちゃんの唇が触れる。
「よし、そろそろ、行こっか?」
「うん!」
ドアの鍵をしめて、やっぱり、俺の少し前から、当たり前みたく差し出された、しょーちゃんの手に指を絡める。
「今日は大学まで、歩いてこ」
「うん」
差し出されたしょーちゃんの左手には、SHAMROCKのブレスレットが揺れる。
俺の左手にも、同じブレスレット。
歩く度に、しゃらしゃら、揺れる。
ねぇ、しょーちゃん。
いつまでも、こうやって、手をつないで、並んで歩きたいな。
いつも、俺より少し前を歩くしょーちゃんに、少しでも追いつけるように、頑張る、から。
「あ!」
しょーちゃんが突然、立ち止まって振り返った。
「どうしたの?」
「大学入学、おめでとう!雅紀!」
言うの、忘れてた!
って、笑うしょーちゃんに、もぉ!って、軽くパンチをした。
かっこよくて、やさしくて、頭が良くて...それで、たまに、ちょびっとだけ残念なしょーちゃんが、ほんとにほんとに大好きだよ。
