「あ、ニノ、おかえりー」
ミーティングルームから、ふらり、とおーのさんが出てきた。
「あれ、いたんですか?」
「あ、インカム...忘れてたわ」
ゴソゴソとポケットからインカムを取り出して、セットしながら、おーのさんが言う。
「所長が、上に回すから、今日までの相葉くんのデータをまとめとけってさ。今、ずっと映像編集してたから、目がしょぼしょぼするわー」
目頭を指でぎゅうぎゅう押して、首をぐるぐる回しながら、言う。
「なにか、ありました?」
そう、聞けば、首を回していた途中の角度で『ん?』って、止まって振り返る。
「なんかって...なにが?」
「...今日のおーのさん、なんか、おかしい...」
んんー?って、首の角度はそのまんまで、身体だけ、ぐるんって、俺の方に向きを変えて、にやり、と笑った。
「かず不足、だからなぁ...」
綺麗な指が伸びてきて、俺の頬を撫でた。
その指を、そっと握る。
「違う」
おーのさんの目を見て、そう言えば、ちょっと驚いた顔をする。
「俺のせいにすんな。アンタの考えてることは違うことだろ。ひとりで、何を悩んでんの?」
おーのさんの顔から、笑顔が、消えた。
「...なぁ...今日、来れる?」
「...え?」
おーのさんの、瞳から、目が離せなく、なる。
「抱きたい」
「......はぁっ?!」
慌ててインカムのスイッチを切る。
「アンタ、バカだろ?!」
「ふふ、うん、そうかも」
おーのさんの指を掴んだままの俺の手を、そのまま握って、引き寄せて...
おーのさんは、俺の手に、キスをした。